建設DXについてわかる!主な技術と推進のための取り組み

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近年、さまざまな業界でデジタル技術を取り入れた業務効率化が推進されています。そのなかでも、さらなる推進が期待されているのが建設業界です。 経済産業省が東京証券取引所や、独立財団法人情報処理推進機構と共同で行っている「DX銘柄2022」でも、建設業界からは1社しか選定されていません。建設業界では人手が不足しており、業務の効率化や生産性の向上のためにもデジタル技術の活用が急がれます。 今回は建設DXの必要性や求められる技術について解説しながら、建設業界でデジタル変革がすすまない原因、今後の取り組みをご紹介します。

建設DXとは?

DXとは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略語です。直訳すると「デジタル変革」。経済産業省の「「DX 推進指標」とそのガイダンス」では、企業がデジタル技術を用いて古いシステムを脱却し、業務フローの改善やビジネスモデルの創出を行うことと定義されています。

DXは幅広い業界や企業が競争力の優位性を維持し、強化するための重要な課題です。経済産業省でも「デジタル経営改革のための評価指標(DX推進指標)」を定めて、変革を後押ししています。

建設業界は2025年問題として、慢性的な人手不足や長時間労働など、解決していかなければならないさまざまな課題があります。

そのなかでも取り組みが急がれているのが、建設現場にデジタル技術を取り入れる建設DXです。現場にIT機器を導入するだけではありません。データやデジタル技術をフル活用して、社会のニーズにあわせてさまざまな建設現場のプロセスを変革するのが目標です。

社会はオンライン化が進んでいるため、現場で打ち合わせをしながら仕事を進めるスタイルの建設業界は変革を迫られています。同時に、建設業界の人手不足や技術を次世代につなぐノウハウ継承の問題は深刻です。

このような建設業界が抱える課題解決に役立つのが建設DXです。建設業界は製造工程が長く、規模の大きな事業が多い傾向にあります。また、多くの関係者が関わるため、DXによる効率化が大いに期待できる業種です。社会全体の問題克服のためにも、建設DXの早期実現が求められます。

参照:経済産業省「「DX 推進指標」とそのガイダンス

建設DXで用いられる主な技術

それでは、建設業界の現場にはどのようなデジタル技術が導入されているのでしょうか。現場での具体的な事例とともにみていきましょう。

BIM/CIM

BIM/CIMは、建設する構造物を3次元の立体的な画像で示すデジタル技術です。BIM(ビム:Building Information Modeling)は建設分野に、CIM(シム:Construction Information Modeling/Management)は土木分野に導入されています。

立体的な3Dモデルは従来の平面的な図面より、理解しやすいのが魅力です。現場の計画、調査、設計段階から3Dモデルを導入し、施工や建築後の維持管理にも連携させれば、事業全体の業務効率化と高度化が実現するでしょう。

早い段階で顧客の理解が深まると情報共有がしやすくなり、意思決定やコミュニケーションにかかる時間を大幅に短縮できます。具体的なシミュレーションができ、初期段階で性能や構造、設備との干渉チェックができるのも、建設業界の現場では大きな強みです。

BIM/CIMの導入は、設計品質の向上や無駄なトータルコスト削減にも貢献するでしょう。

AI(人工知能)

人工知能のAI(Artificial Intelligence)も、建設DXに欠かせない技術です。高度な計算機能だけでなく、機械学習ができるのがAIの特徴AIを建設業の現場に活用すれば、膨大なデータを速やかに処理して一括管理ができるでしょう。

建設業界では、次のようなさまざまな分野でAIが活用されています。

・構造計算や設計

・ICT建機の制御

・画像認識

・ICT機器やセンサーが検知した情報のデータ分析

・建設機械に搭載する人体センサー

・iPadをはじめとするタブレットを使う写真管理や書類管理ツール

・工程を可視化するプロジェクトマネジメントツール

・生産性と品質向上を目的とするフォトラクション

AIは人間と同じように学び判断ができるため、属人性の高い業務を自動化するのに役立ちます。たとえば、熟練のオペレーターを必要とするICT建機の制御をAIに任せれば、現場の効率化と省力化が実現するでしょう。

AIは処理速度が人間よりも早く、最適解を導き出せるため、より安全性の高い施工と品質向上にも貢献します。

ICT(情報通信技術)

ICT(Information and Communication Technology)とは、情報通信技術のことです。インターネットもそのひとつで、建設DXではICTを活用して遠隔地から機器を操作する技術が現場に導入されています。

ドローンが撮影した画像から測量データを3次元化し、正確な施工に役立てられるのはデジタル技術ならではです。とくに、人の手を入れにくい危険な現場では、ICT技術による自動化が進んでいます。ICT建機は現場の作業効率や正確性の向上、作業人員の省力化に欠かせません。

ICT建機には、自動制御タイプのMC(マシンコントロール:Machine Control)と、操作を補助するタイプのMG(マシンガイダンス:Machine Guidance)の2種類があります。そのほか、自動操縦や遠隔操作する建機だけでなく、PCT建機と呼ばれる建機もあります。たとえば、無人で稼働するブルドーザーや、自動で資材を運ぶ配送運搬ロボットなどです。

建設DXが進まない?現在の建設業界における課題

ここでは建設DXが進まない原因について紹介します。

人手不足

大企業、中小企業問わず、半数以上の企業が建設DXの取り組みが進まない理由に人材不足をあげています。デジタル技術を現場に導入するにも、保守管理を行うにもIT人材が必要です。

建設業はもともとアナログ業務が多い側面があり、IT人材が不足しています。また、新しい取り組みへの抵抗感が大きいため、デジタルツールやICT建機を扱う人材が増えにくいのも実情です。

デジタル格差

デジタル格差が生じやすいのも建設業界でDXが進まない一因です。

建設業界は大手ゼネコンが元請けとなり、中小企業が現場を担当する下請け構造が主流です。下請けや孫請け企業は事業規模が小さいのが一般的で、現場作業が多い仕事の特性上、デジタル機材を扱う機会が多くありません。

そのため、大手ゼネコンでは導入していても、下請け企業はデジタル化できないという格差が生まれます。そもそも中小企業はIT人材が少なく、導入コストを捻出しにくいためデジタル化が進みにくいのです。

そのほか、デスクワーク主流の設計ではデジタル化が進みやすく、施工では進みにくいといった、仕事のプロセスによる格差も生まれやすい傾向があります。

現場環境

現場の特性からデジタル化が遅れる一面もあります。たとえば、プラント工場では物理的に機械を導入しにくく、建設DXの取り組みから遅れがちです。

建設DXを推進する国の取り組み

建設業界へのデジタル技術の普及は国も推進しています。ここでは建設DXに関する国の取り組みを紹介します。

i-Construction

i-Constructionは、建設業界の生産性向上を目標に掲げ、国土交通省が主導しているプロジェクトです。次の3つを柱に「きつい、危険、汚い」というイメージのある建設現場を魅力的に変えるさまざまな取り組みが行われています。

・ICTの全面的な活用

・規格の標準化

・施行時期の標準化

BIM/CIM原則適用

国土交通省は、i-Constructionの取り組みのなかでBIM/CIMの導入を推進してきました。2023年からは、小規模を除くすべての公共事業にBIM/CIMが原則適用されます。

BIM/CIMは本来、2025年の適用が目標でした。2年適用を早めることで、業務の効率化や生産性の向上に役立つと期待されています。

まとめ

デジタル技術の導入は、幅広い業界で推進されています。建設業界においても、DXはさまざまな課題の解決に役立つと期待されています。

建設業界は仕事の特性からデジタル格差が生まれやすく、DXの導入が進みにくい業種です。その一方で、ICT建機をはじめとするデジタル化が進むメリットは大きく、前向きな取り組みが求められます。