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建設業の新3Kとは?従来の3Kとの違い

建設業界では長年、「3K」という言葉が使われてきました。3Kとは、「きつい」「汚い」「危険」という3つの要素を表しており、バブル期から使われ始めたといわれています。このようなネガティブなイメージは、建設業界の人材不足や高い離職率の一因にもなっています。
そこで、国土交通省は新3Kの推進に力を入れ、建設業界全体でイメージの払拭に向けた取り組みが始まりました。
新3Kとは、「給与が高い」「休暇が取れる」「希望がもてる」の頭文字を取ったものです。従来、建設業界に対してネガティブなイメージとして使われていた3Kとは大きく異なり、新3Kは、建設業界で働く人々にとって魅力的な職場環境をつくることが目的です。
建設業界の魅力をアピールする手段として、近年は新3Kに「かっこいい」を加えて新4Kとする動きも見られます。建設業界が持つ技術力の高さやプロフェッショナルな仕事としての側面を強調し、より多様な人材の関心を引くことをめざしています。
建設業界では人材不足が深刻な問題となっており、特に若手人材の確保が難しい状況です。
新3Kの取り組みは、人材不足を解消するためにも魅力的な職場環境を整備することで、優秀な人材の確保と定着を図ることをめざしています。 建設業界の働き方について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
建設業における新3Kの取り組み

ここからは、建設業における新3Kの取り組みを紹介します。
給与
給与面の改善を目的とした取り組みは次の通りです。
・労務費見積もり尊重宣言
・CCUS義務化モデル工事
「労務費見積り尊重宣言」とは、建設技能者のレベルに見合った適正な労務費を見積もることを尊重するという宣言です。下請け企業の労務費見積を尊重する企業に対して、総合評価で優位に扱われます。これにより、適正な労務費の確保を促進しています。
また、CCUS(建設キャリアアップシステム)の活用を義務化するモデル工事も行われています。CCUSは、建設技能者の資格や経験を登録・蓄積し、能力評価につなげるシステムです。
一般土木工事において、CCUSの活用の目標達成状況に応じて成績評定に加減点を行います。技能者の給与水準を改善し、建設業界全体を魅力的な環境にするための重要な取り組みです。
休暇
適切に休暇が取れる建設業界をめざすための取り組みは次の通りです。
・週休2日制の導入
・時間外労働の上限規制
・「適正な工期設定に関する指針」を策定・公表
国土交通省は建設業界の働き方改革を推進して、休暇を増やすために週休2日制を導入しています。
2024年4月からは、建設業界にも時間外労働の上限規制が適用されています。
国土交通省は、2020年3月に「適正な工期設定に関する指針」を策定・公表しました。この指針では、施工に必要な実日数や休日などを考慮して工期を設定することが発注者の義務になりました。
週休2日制の導入と適正な工期設定により、労働環境が改善されることが期待されます。
希望
希望がもてる建設業界をめざすための取り組みは次の通りです。
・「i-Construction」の推進
・発注見通しの公表の義務化
建設業界では、現場での生産性の向上をめざす取り組みとして「i-Construction」の推進をしています。
i-Constructionとは、ICT(情報通信技術)やBIM(Building Information Modeling)を活用した建設工事のことです。ICTはコンピューターによる情報処理やネットワークを用いた通信技術のことです。BIMは、建築物の設計・施工・維持管理の全過程で3次元モデルを活用する技術を指します。
このようなデジタル技術を活用して、建設業界の働き方を改革することが目的です。
また、発注者に対して、中長期的な発注見通しの公表が義務化されました。これは、特定期間に業務が集中するのを避け、労働者の処遇改善を目的としたものです。
建設業の新3Kが注目される背景

ここからは、建設業の新3Kが注目される背景をご紹介します。
建設業の需要が増加
2024年度の建設投資は、73兆円200億円となる見通しです。2022年度比2.7%増で、堅調に上昇しています。
この背景には、自然災害からの復興や大阪・関西万博の開催に向けた建設需要増加などがあげられます。また、建物は建てたら終わりではありません。時間の経過とともに老朽化し、修繕工事が必要になります。これが需要が極端に減少しない理由のひとつでもあるのです。
建設業界の今後について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
「【2025年】建設業界は今後どうなる?業界のふたつの課題と対策」
出典:国土交通省「令和6年度(2024年度)建設投資見通し 概要」
従業員の高齢化・若者離れ
近年、建設業従事者の高齢化が進んでおり、引退する人数が増えるとされています。建設業で働く男女計479万人のうち、15歳〜39歳は125万人、40歳以上は354万人、 65歳以上の従業員は81万人とされています。特に2025年には団塊世代が75歳以上となり、多くの建設業者が人手不足に陥ると予想されています。
また、若者が建設業を敬遠する傾向も強いです。長時間労働や低賃金などのイメージが、若者の離職につながっています。
出典:総務省統計局「労働力調査(2022年)」
新3Kの実現に向けて企業がすべきこと

ここからは、新3K実現に向けて企業が行うべき取り組みをご紹介します。
労働環境の見直し
自社の労働環境を見直し、働きやすい職場づくりに努めましょう。
まず取り組むべきは労働時間の管理です。2024年4月に時間外労働の上限規制が建設業界でも義務付けられ、原則として、時間外労働は月45時間、年360時間までとなります。
しかし、その場合でも、次の条件を満たす必要があります。
・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満であること
・2〜6か月の平均で、月80時間以内であること
・月45時間を超える時間外労働は、年6回までに制限されること
法律を守り、業務の効率化やスタッフの適正配置などを通じて、労働時間の管理を徹底しましょう。
また、建設業の給与水準を明確にすることも、魅力的な職場づくりにつながります。給与を安定させるため日給制を見直すことで、求職者にとってより働きやすい環境になります。
給与以外に福利厚生を充実させることも重要であり、建設業の労働環境の魅力を高める要素となります。
出典:厚生労働省「適用猶予業種の時間外労働の上限規制 建設業」
人材育成
教育体制を整え、新人が育つ環境をつくりましょう。現場でのOJT(実践的な指導)や、資格取得に向けた支援制度の整備などがあげられます。
ただし、教育体制を体系化するには多くの時間がかかるという課題があるのも事実です。
そこで近年は、教育プログラムにVR(仮想現実)を取り入れることも注目されています。VRを活用すれば、実際の現場に行かなくても、仮想体験をすることで効率的に知識とスキルを身につけられます。何度でも繰り返し練習できるため、習得までの時間を大幅に短縮できる可能性があります。
新技術を活用した建設DX
建設業界にデジタル技術を導入し、業務効率や生産性を向上させる建設DXが注目されています。
ドローンやAIカメラを現場で活用することで、リアルタイムに現場の状況や工事の進捗状況を把握できます。品質管理を徹底でき、不具合を未然に防ぐことができるのです。
VR技術を使って、建設工事の3Dシミュレーションを行うことも新技術のひとつです。VR上で工事の手順やスケジュールを3Dシミュレーションすることで、工期短縮につなげられます。
現場で使用する資材や機器をネットワークで管理する取り組みも進んでいます。 それにより、在庫状況や物流管理を効率化できるようになるのです。
国土交通省では、2040年度までにi-Construction 2.0(建設現場のオートメーション化)を達成するために、デジタル技術の最大限活用により、少人数で安全、快適な環境で働く生産性の高い建設現場を実現するとしています。
i-Construction 2.0の実現目標は、省人化・安全確保・働き方改革と新3Kの実現です。
出典:国土交通省「国土交通省の技術研究開発の実施状況」(2025年6月)
次世代の担い手の確保
建設業界において最大の課題のひとつが、次世代を担う人材の確保です。少子高齢化に伴う労働人口の減少は深刻であり、特に現場での技能を持つ人材の不足が顕著になっています。
社会インフラを支える建設業は災害時にも大きな役割を果たすため、その重要性を広く社会に訴えることが欠かせません。例えば、地震や台風などの自然災害後には、道路や建物の復旧に建設業が不可欠であることを強調することで、社会貢献度の高さを若い世代に理解してもらうことができます。
人材確保には働きやすい環境づくりも不可欠です。特に女性や若手が長く働ける職場を整備することは、業界全体の持続的な発展につながります。
労働時間の改善や育児・介護と両立できる制度の導入、さらにはテクノロジーを活用した効率化が進めば、これまで参入が難しかった層の就業意欲を高めることが可能です。
さらに、SNSや動画コンテンツを活用した情報発信により、建設現場のリアルな姿ややりがいを広く伝えることが求められています。
実際に働く若手社員の声やキャリア事例を紹介すれば、潜在的な志望者にとって「自分も挑戦できる」というイメージを持ちやすくなります。デジタル発信力を高め、従来の「きつい・危険・汚い」といったイメージを払拭することが、次世代の担い手確保に重要なのです。
女性の入職支援
建設業界は「男性社会」というイメージが根強く残っていますが、実際には女性の適性が高い職種も数多く存在します。
施工管理やCADオペレーター、BIMオペレーター、さらには昨今導入が急がれる建設DX・ICT推進員など、女性が力を発揮できるフィールドは広がっています。特に、デジタル技術を活用する職種では、男女差なくスキルを伸ばしやすいため、今後ますます女性活躍の場が拡大すると期待されています。
すでに大手ゼネコンでは、女性が働きやすい制度を整える動きが加速しています。産休・育休の取得率向上や、現場での設備改善(更衣室や休憩スペースの整備など)が進められており、安心してキャリアを積める環境が整いつつあります。こうした取り組みは、優秀な女性人材を確保するうえで欠かせないポイントです。
一方で、中小企業を含む業界全体で見ると、女性支援の制度が十分に行き渡っていないケースも少なくありません。他業種のようにテレワークや時短勤務など柔軟な働き方を導入することで、女性がキャリアを中断せずに続けられる仕組みをつくることが求められています。また、現場での安全性や快適性を高める工夫も、女性の就業意欲に直結します。
さらに、ロールモデルとなる女性社員の存在も重要です。キャリアを築いている先輩女性の声を積極的に発信することで、「建設業界でも自分らしい働き方ができる」という認識を社会全体に広めることができます。業界全体で女性の入職支援を推進すれば、多様な人材が活躍できる持続可能な建設業界の未来が描けるでしょう。
まとめ
新3Kとは、「給与が高い」「休暇が取れる」「希望がもてる」を指し、魅力的な職場環境をめざす取り組みです。建設業界では長年、「きつい」「汚い」「危険」という3Kのイメージが定着していましたが、人材不足や離職率の高さから、業界全体でイメージの払拭に挑んでいます。
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