国家資格「石綿作業主任者技能講習」の合格率が高い理由とは

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建設業や解体業に従事していると、耳にする資格のひとつに石綿作業主任者があります。 石綿作業主任者は、石綿(アスベスト)を扱う現場の環境と作業員の健康を守るために定められた資格です。現場での需要が多い資格である石綿作業主任者を取得することで、建設業や解体業での業務の幅が広がります。資格の取得を考える際に気になるのが修了試験の合格率です。 今回は石綿作業主任者の合格率や取得方法について解説いたします。

石綿作業主任者技能講習の合格率と難易度

石綿作業主任者とは、労働安全衛生法に定められた国家資格です。2006年に導入されました。石綿作業主任者の資格は、石綿作業主任者技能講習を受講して修了試験に合格することで取得できます。

石綿作業主任者を取得すると、石綿(アスベスト)を取り扱う作業ができるだけでなく、石綿取扱作業従事者の監督や指揮ができます。

アスベストを取り扱う現場において、石綿作業主任者1人を配置することが義務付けられています。そのため、石綿作業主任者は建設業や解体業で需要のある資格です。受講するために実務経験が求められないので、どなたにも受講資格があるのが特徴です。

石綿作業主任者技能講習の修了試験は、2日間ある講習の2日目の最後に行われます。

修了試験では、以下のふたつの条件をすべて満たすことで合格となります。

・各科目の得点が満点中40%以上

・全科目の合計得点が満点中60%以上

修了試験の合格率は公表されていませんが、技能講習を受講した9割以上の人が合格しています。修了試験は、技能講習に参加して講義内容を押さえていれば合格できるレベルであり、難易度はそれほど高くありません。

石綿作業主任者の合否は受講姿勢に左右されやすい

石綿作業主任者技能講習の修了試験では、講師の説明した内容を真剣に聞いておくことで、合格の可能性が大きく変わります。

講習では、講師が修了試験の前に重要な部分を復習して、アンダーラインを引くなどの指導をします。修了試験の問題の大半は講師が示した部分から出題されます。

そのため、アンダーラインを引いた重要箇所を試験の直前に読み返しておくことで、合格できる確率が高いといわれています。

石綿作業主任者技能講習の流れ

ここでは石綿作業主任者技能講習の流れについてご紹介します。講習の詳細は、教習機関によって異なる部分もありますが、基本的には申し込みから受講、修了試験、発表という流れで行われます。

申込

石綿作業主任者技能講習は、各都道府県の労働局や労働基準協会連合、労働局登録教習機関などで行われます。講習の開催日や申し込み期間はエリアによって異なります。

受験の申し込みをする際は、利便性を踏まえて自分の住んでいる都道府県の近くの会場を調べましょう。ただし、住んでいる都道府県以外の会場で受講しても問題はありません。

参照元:厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「講習会情報

石綿作業主任者技能講習の申し込みは、受講する都道府県の講習機関のホームページから行います。基本的にはホームページからの申し込みが原則です。ただし、中には郵送での申し込みを受け付けている教習機関もあります。

石綿作業主任者技能講習は、受講する地域が同じでも教習機関によって受講費が異なります。具体的な金額は、受講費とテキスト、資料代などを合わせて10,000円~20,000円です。また、受講料以外にも写真代や切手代が必要なこともあります。

技能講習を受講

石綿作業主任者技能講習は、2日間にわたって行われます。2日間の受講期間に数名の講師が登壇し、石綿の取扱や作業環境、法令などについての講義を行います。

【石綿作業主任者の講習科目】

1.石綿による健康障害とその予防措置に関する知識

2.作業環境の改善方法に関する知識

3.労働衛生保護具に関する知識

4.関係法令

登壇する講師は、労働安全コンサルタントや防護具メーカーの社員、医師などです。それぞれ、講習科目に沿った講義が行われます。テキストを使った講義だけでなく、実際に防護マスクに触れるような講義もあります。

講習後に修了試験が行われるため、講師が強調したポイントをしっかり覚えることが重要です。

修了試験を受験

石綿作業主任者技能講習の修了試験は、2日目の講習が終わった直後に行われます。

出題内容は教習機関により異なりますが、問題数や試験方法はおおむね決まっています。

・問題数:25問

・試験方法:三者択一式

・試験時間:1時間

上述のとおり、難しい問題やひっかけ問題は考えにくく、試験の前にテキストの重要箇所を見直しておくことで合格することができるでしょう。

石綿作業主任者の合格発表

修了試験の結果は、試験終了後30分程度で発表されます。

合格していれば、その場でカード型の修了証が交付されますが、教習機関や申込日によっては後日郵送となる場合もあります。事前に確認しておきましょう。

不合格の場合は、教習機関によって対応が異なります。なかには、15分程度の再講習を行った後に追試験を実施する教習機関もあります。

技能講習修了証には、有効期限や更新はありません。ただし、おおむね5年ごとに能力向上教育を受けるという努力義務が定められています。あくまでも努力義務なので、能力向上教育を受けなくても資格が失効することはありません。

石綿作業主任者技能講習に関して把握しておきたいこと

最後に、石綿作業主任者技能講習を受講する際に、あらかじめ把握しておきたいことについてご紹介します。

原則としてスマートフォンやPCから申し込む

石綿作業主任者技能講習の申込は、ホームページや郵送などで受け付けています。

原則として、申込はスマートフォンやPCを使ってホームページから行うと定めている教習機関もあるため、事前に確認を行いましょう。原則としてホームページからの申込しか受け付けていない教習機関でも、スマートフォンやPCが使えない場合は、郵送やFAXで受け付けてくれることもあります。一度、電話で相談すると良いでしょう。

申し込み後のキャンセルはできない

石綿作業主任者技能講習の申し込み後のキャンセルは、原則として受け付けていません。そのため、申し込み後に受講しなかった場合でも受講料は返還されません。

ただし、やむを得ない事情の場合は、受講日の振替対応をしてもらえることがあります。

【振替対応をしてもらえる可能性がある場合】

・病気や災害などのやむを得ない事情がある場合

・新型コロナウィルス感染拡大による感染や講習中止の場合

振替対応の可否は、教習機関の対応だけでなく、社会情勢によっても変わります。基本的には申し込み後のキャンセルは不可であると考えておきましょう。

また、講習では遅刻は認められていないため、各科目の開始前までに着席しておかなければなりません。開始時刻を過ぎても着席していない場合は、欠席扱いとなり講習が未修了となるので注意しましょう。

テキストは技能講習当日にもらえる

石綿作業主任者技能講習では、教本として石綿作業主任者テキスト(中央労働災害防止協会編)を使用します。

講習で使用するテキストや資料は、受講の当日に配布されます。事前送付の対応はしていないので、講習前の予習などはできません。

上述したとおり、石綿作業主任者技能講習の修了試験は講習をしっかりと受講していれば合格率が高いといわれています。事前にテキストの送付がなくても、試験の結果にさほど影響はありません。

まとめ

石綿作業主任者は、石綿を扱う現場に配置しなければならない国家資格です。資格は、2日間の講習後に実施される修了試験に合格すると取得できます。

石綿作業主任者の修了試験は、合格率が高く、講習をきちんと受けることでほぼ合格できます。また、講習は実務経験なしに受講できるので、挑戦しやすい国家資格です。

石綿作業主任者の資格取得を考えている人は、事前に講習を受講して合格を目指しましょう。