実務経験証明書とは?
実務経験証明書とは、ある職種や業界における実務経験を証明する書類です。建設業でいえば実務経験年数や内容、工事の種類などを記載します。
実務経験証明書は専任技術者の証明に必要なため、正しく記載しましょう。ここでは実務経験証明書について詳しく解説します。
専任技術者の証明に必要な書類
建設業許可の要件には専任技術者と呼ばれる、一定の実務経験や資格を有した技術者の設置が含まれます。申請する際は、専任技術者の実務経験証明書を提出しなければなりません。
実務経験証明書は実務経験を証明するための書類です。そのため、該当する国家資格を取得している場合、実務経験証明書は不要です。
なお、建設業許可を受けるための要件は下記の通りです。
1.建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する者
2.専任技術者
3.誠実性
4.財産的基礎等
出典:国土交通省「許可の要件」
証明には10年間の実務経験が必要
建設業許可に際して、専任技術者の要件をクリアするには10年以上の実務経験が必要です。
しかし、指定学科修了者であれば、高等学校もしくは中等教育学校の卒業後で5年以上の実務経験、大学もしくは高等専門学校卒業後で3年以上の実務経験に短縮されます。
実務経験証明書が必要になるタイミング
実務経験証明書が必要になるのは、新規で建設業許可申請を行うときと、すでに建設業許可を得ていて専任技術者を変更するときです。
建設業許可の申請では専任技術者がいなければなりません。専任技術者になるための実務経験を有しているかどうかを確認する目的で実務経験証明書の提出が求められます。
また、新たに専任技術者になる方が、一般建設業の専任技術者と認められる技術資格を有する方に該当することもあるでしょう。そのような場合には実務経験証明書の提出は必要ありません。
実務経験証明書のダウンロード先
実務経験証明書は国土交通省のホームページからダウンロード可能です。
下記サイトの「許可申請の手続き」→「1.1.許可申請書及び添付書類の準備」→「許可申請書及び添付書類(記載要領あり)(PDF)」の47ページが実務経験証明書です。
出典:国土交通省「許可申請の手続き」
実務経験証明書の書き方
実務経験証明書の記載方法がわからないという方も多いのではないでしょうか。ここでは実務経験証明書の書き方について詳しくご紹介します。
証明者に関する箇所
まずは、書類上段の証明者に関する箇所の書き方をご説明します。
工事の種類
「下記の者は、〇〇工事に関し、~証明します。」の箇所には、建築・土木・電気・舗装・管・造園・解体などの中から行う工事を選択して記入します。行う工事が複数ある場合には、申請したい工事の種類ごとに実務経験証明書を作成する必要があります。
日付
日付は申請日を記載します。工事を行う日付ではないため注意しましょう。実務経験証明書のすべての項目を埋めた後に記入することをおすすめします。
証明者
専任技術者の実務経験を証明する者として、会社の所在地、正式な商号・屋号、会社名・代表者氏名を記入します。個人事業主の場合は事業主の名前と住所を記入しましょう。
やむを得ず自己証明する場合は、実務経験証明書の下段にある「使用者の証明を得ることができない場合はその理由」という欄に、自己証明する理由を記入します。あわせて、当該事実を証明する書類を添付します。
被証明者との関係
証明者から見た、被証明者との関係について記載します。一般的には「社員」「役員」あるいは「元社員」などと記入します。
技術者に関する箇所
続いて技術者(被証明者)に関する項目の記入方法について解説します。
技術者の氏名
技術者の氏名を記載します。別途作成する、「専任技術者証明書(様式第八号)」で記入する名前と一致する必要があります。
技術者の生年月日
技術者の生年月日を元号で記入します。ここで記載する生年月日も「専任技術者証明書(様式第八号)」で記入する名前と一致する必要があります。
使用者の商号または名称
実務経験を積んだ会社の商号または名称を記入します。働いていた当時の名称で記載する点に注意しましょう。個人事業主の場合は屋号か名前を記入します。
使用されていた期間
使用(雇用)されていた期間を記入します。これは実務にあたった期間ではなく、使用されていた期間であるため、入社から退社までの期間を記入します。すなわち、後述する実務経験年数とは異なる場合もあるため注意しましょう。
経験年数に関する箇所
最後に、経験年数に関する項目について記入方法をご紹介します。
職名
職名には、当時担当していた役職を記入します。例えば「工事主任」「工事係長」「工事課長」などです。
実務経験の内容
実務経験の内容について、具体的に記入します。例えば「〇〇マンションの新築工事」「〇〇小学校の改修工事」「〇〇病院の新築工事」などです。施設名称や工事内容が伝わるように、1行1件ずつ詳細に記載しましょう。また、書き方の指定がある場合はそれに従ってください。
実務経験年数
実務経験年数は、携わった実務経験ごとに期間を記入する欄です。「〇〇マンションの新築工事」に3年携わった場合は、「平成20年3月から平成23年3月まで」といったように記載します。こちらも西暦ではなく元号で記載する点に注意しましょう。
また、別の工事の終了月と開始月が被るのは避ける必要があります。終了月か開始月のどちらかを繰り上げる(繰り下げる)など、ずらして記載しましょう。
使用者の証明を得ることができない場合はその理由
実務経験証明書は原則として使用者の証明が必要です。しかし、当時勤めていた会社が倒産して事業主に連絡が取れない場合や、やむを得ない理由によって使用者の証明が得られない場合は、正当な理由を記載しましょう。
具体的には、「令和〇年〇月 会社解散のため」「令和〇年〇月 事業主死亡のため」などと記載します。
実務経験を数える際のポイント
専任技術者としての要件を満たすには、原則として10年以上(指定学科修了者であれば5年以上か3年以上)の実務経験の証明が必要です。
間違った実務経験年数の数え方をすると、実務経験として認められないため注意しましょう。ここでは、実務経験年数を数える際のポイントをふたつご紹介します。
実務経験に数えられるのは常勤で働いていた期間のみ
実務経験として数えられるのは常勤として働いた期間のみであるため、アルバイトなどで勤務していた期間は除きます。
「常勤かどうかがわからない」という方は、厚生年金に加入していたかどうかを確認してみてください。給与明細や源泉徴収票などを見れば厚生年金に加入していたかわかります。
実務経験は合算することが可能です。複数の会社で実務経験がある場合、合算して常勤年数が10年以上あれば要件は満たせます。
また、実務経験年数は12か月以上の空白期間がなければ、連続した実務経験とみなされます。
実務経験を計算する際に覚えておきましょう。
期間内での実務経験が認められるのは1業種のみ
複数の業種を同時並行で務めていた場合、実務経験として認められるのは1業種のみである点に注意しましょう。すなわち、2業種の専任技術者になるには20年必要となる場合があります。
自治体によって数え方が異なる
実務経験の年数を数える際の方法は、全国的に統一されているわけではありません。申請先の自治体によってそれぞれ数え方に違いがあります。ある自治体ではぎりぎり10年と数えられる場合でも、別の自治体では10年未満として扱われることもあるため注意しましょう。
実際に申請をする際には、申請先の都道府県でどのような数え方のルールを採用しているのか事前に確認しておくことが必要です。数え方はまったくバラバラなのではなく、いくつかのパターンに分かれています。
1.実際の工期をそのまま実務経験の期間として扱う数え方
2.工期と工期の間に空きがあっても12ヶ月未満なら連続しているものとして扱う数え方
3.担当した工事が1件あると、その年1年間を実務経験とする数え方
多くの自治体は上記3つのいずれかに該当します。
実務経験証明書に必要な資料
実務経験を証明するために、裏付けとなる書類などが必要な場合もあります。求められる資料や書類の具体的な種類は自治体によって異なるため、申請先自治体のホームページや手引などを確認してみましょう。ここでは、一般的なものを紹介します。
工事実績を証明する資料
工事実績を証明する資料は、証明者が建設業許可を取得しているか否かで異なります。具体的には次の表の通りです。
証明者が建設業許可を取得している場合 | 証明者が建設業許可を取得していない場合 |
許可通知書 | 工事請負契約書 |
許可申請書 | 請求書 |
変更届 | 注文書 |
廃業届 | 入金確認資料(通帳の写しなど) |
証明期間中に常勤していたことがわかる資料
期間中に常勤していたことを証明する際に必要な書類は、証明者が個人か法人かで異なります。具体的には次の表の通りです。
証明者が法人の場合 | 証明者が個人の場合 |
保険証の写し | 保険証の写し |
健康保険・厚生年金被保険者に関する標準報酬決定通知書 | |
住民税特別徴収税額通知書 | 所得税確定申告書の写し(証明する期間分) |
直近の決算の法人用確定申告書の写し | |
厚生年金記録照会回答票 | |
健康保険組合等による資格証明書 |
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まとめ
実務経験証明書とは、ある職種や業界における実務経験を証明する書類のことです。建設業では工事の規模や内容によって専任技術者を設置する必要があり、建設業許可を申請する際に実務経験証明書が必要になる場合があります。
必要書類をミスなく提出するためにも、記入の方法やポイントを把握してから丁寧に作成しましょう。