目次
施工管理技士補とは技術検定制度の変更で新設された資格
施工管理技士補は、建設業法改正時の技術検定制度変更によって新設された資格です。インフラ整備、災害復興などによって需要が高まっている建設業界で、現場を管理する施工管理の担い手が不足しています。
そこで、新たな担い手の中長期的な育成・確保を目的として、2019年に制度変更が可決されました。その結果、施工管理技術検定を取り巻く環境がどう変わったのか、変更前後を比較しながら解説します。
変更前の技術検定制度
国家資格である施工管理技士の資格を取得するには、学科試験と実地試験の両方に合格する必要があります。この点は、技術検定制度が変更される前も、変更された後も同じです。
制度変更前は、学科試験に合格すると、翌年以降の学科試験が免除されていました。ただし、免除の有効期間は2年間で、有効期間中に実地試験に合格できなかった場合は学科試験を再受験する必要があり、資格取得までのハードルが高めに設定されていました。
変更後の技術検定制度
2021年4月1日に技術検定制度が変更されてからは、学科試験が「第一次検定」、実地試験が「第二次検定」に変更されています。そして、第一次検定に合格すると、施工管理技士補の資格が取得できるようになりました。
さらに、制度変更前は2年間の有効期間内に実地試験に合格する必要がありましたが、制度変更後は施工管理技士補の資格を得たあと、期間を問わず第二次検定に合格すれば施工管理技士の資格を得られるようになっています。
なお、制度変更前の実地試験にあたる第二次検定は、「実地」といっても実技を行うわけではありません。第一次検定と第二次検定のいずれも筆記試験であり、第一次検定はマークシート形式で、第二次検定は自由記述形式で出題されます。
施工管理技士補を取得するふたつのメリット
第一次検定に合格することで得られる施工管理技士補の資格ですが、取得することにどのようなメリットがあるのでしょうか。
一次検定だけで資格を取得できる
前述のとおり、これまで施工管理技士の資格取得のためには一次検定と二次検定の両方の合格を得る必要がありましたが、技士捕が新設されたことにより、一次試験を合格するだけで資格を取得できるようになりました。
制度変更前までは、一次検定(旧:学科試験)に合格しても、これといって資格を取得することはできませんでした。さらに、一次検定を免除される期間が2年間と定められていたため、何らかの理由で合格から期間が空いてしまうと、一次検定の受験からやり直さなくてはならなかったのです。
しかし、施工管理技士補が新設されたことにより、一次検定に合格した時点で施工管理技士補の資格が得られるようになりました。1度資格を得れば、ブランクがあっても一次試験を再受験する必要もありません。
また、公共工事の競争入札に参加する際に必要な経営事項審査で施工管理技士補が加点対象になるため、とくに中小企業で重宝されるというメリットもあります。※
1級施工管理技士補の資格を取得すると業務の幅が広がりますが、2級施工管理技士補の資格はとくに業務でできることが増えるわけではありません。しかし、経営事項審査で加点の評価対象になることから、建設業界への就職を目指すときに有利になるのです。
※2級施工管理技士補の場合は、CPD(Continuing Professional Development)で単位を取得した場合に限られます。
1級施工管理技士補なら監理技術者補佐ができる
1級施工管理技士補の資格を取得した場合は、施工監理技術者の補佐ができるようになるというメリットが得られます。
あくまで補佐であるため、常に施工監理技術者の監督・指導を受ける必要がありますが、1級施工管理技士の資格を得る前から業務に携われることは、大きな経験となるでしょう。
また、制度変更前は適正な施工を確保するため、工事の規模に応じて1工事につき1人の施工監理技術者を専任配置する義務があり、同じ施工監理技術者が現場を掛け持ちすることはできませんでした。
しかし、制度変更後は現場に補佐者をひとり専任配置することで、監理技術者がふたつの現場まで兼務できるようになっています。ふたつの現場を統括する監理技術者は特例監理技術者と呼ばれます。このことは、人手不足の課題を抱える企業側にとっても、メリットが大きいといえます。
施工管理技士補の受験資格と試験内容
これまでは施工管理技士捕が新設された背景や資格取得のメリットを紹介してきましたが、受験資格や試験内容はどのような内容なのでしょうか?この項目では、施工管理技士捕にチャレンジができる受験資格と具体的な試験内容について紹介します。
施工管理技士補の受験資格
施工管理技士補の資格を取得するには、土木、建築、電気など施工管理技術検定の7種目のなかから種目を選択し、1級または2級の第一次検定に合格する必要があります。
2級の受験資格は「満17歳以上であること」のみで、在学中の高校生でも受験可能です。一方、1級の受験資格は2級の合格者であれば実務経験は問われません。ただし、2級施工管理技士の合格者でなければ、指定の実務経験年数をクリアする必要があります。国土交通省が発表した各種目の1級・2級の合格率は、以下のとおりです。
■一次検定(技士捕)の試験合格率
種目 | 2級 | 1級 |
建築施工管理 | 37.9% | 36.0% |
建設機械施工管理 | 54.7% | 26.6% |
土木施工管理 | 70.3% | 60.6% |
電気工事施工管理 | 60.3% | 53.3% |
電気通信工事施工管理 | 87.4% | 58.6% |
管工事施工管理 | 56.0% | 24.0% |
造園施工管理 | 52.2% | 35.9% |
合格率は種目によって大きな差があり、1級では合格率が20%台という難易度の高い種目もあります。場合によっては、合格までに複数回受験する可能性があることを理解しておきましょう。
施工管理技士補の試験内容
施工管理技術検定2級の第一次検定では、施工管理を行うための基礎知識や能力の有無を問う問題が出題されます。制度変更前の施工管理技術検定2級の学科試験で出題されていた知識問題をベースに、能力問題が追加されているのが特徴です。
施工管理技術検定1級の第一次検定では、監理技術者補佐として施工管理を行うための知識や能力があるかを問う問題が出題されます。制度変更前の施工管理技術検定1級の学科試験で出題されていた知識問題をベースに、能力問題が追加されているのが特徴です。
各種目の指定試験機関のホームページなどに、試験の過去問題や配点などが掲載されています。制度変更によって過去問題と傾向が変わっている部分もありますが、参考までに自分が受験する種目の情報に目を通してみると良いでしょう。
まとめ
施工管理技士補は、建設業界の人手不足を補う目的で新設された資格です。1級の施工管理技士補の資格を取得すれば、監理技術者補佐として働けるようになります。
2級の施工管理技士補の場合は業務の幅そのものは広がりませんが、経営事項審査で加点の評価対象になることから、就職の際に有利になるという魅力があります。種目によっては難易度が高い資格ではありますが、チャレンジする価値はあるといえます。
共同エンジニアリングには、未経験者の採用枠もあります。1人前の施工管理技術者を目指すための導入研修・資格支援研修を充実させています。そのため、建設業界未経験の状態から正社員を目指すことも可能です。
遠方に住んでいる、在職中の転職活動でなかなか時間が取れないといった方のために、Web面接にも対応しています。職種の相談なども受け付けていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。