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工事経歴書とは?
工事経歴書は、前事業年度に行った工事(未完成工事も含む)を工種ごとに記載した書類です。建設業許可の申請や、経営規模等評価申請をする際に使用されます。また、申請用とは異なる工事経歴書も存在し、これは建設業界や建設関連の職種に従事する人が求人応募の際に使用する書類です。
工事経歴書には着工年月や請負形態、工事場所などの工事に関する詳細な情報を記載します。経営事項審査を受ける場合とそうでない場合で、記載方法が異なるため注意が必要です。
工事経歴書の記載項目
工事経歴書は建設工事の種類や工事名、請負代金など14項目記載する必要があります。
1.建設工事の種類 | 許可を受ける(すでに受けている)工種を記載します。(例:内装仕上) |
2.税込・税抜の別 | 用紙に記載する金額が税込または税抜かを選んで丸をつけます。経営事項審査を受ける場合は税抜を選択しますが、免税事業者の場合は税込を選択します。経営事項審査を受けない場合はどちらでも構いません。 |
3.注文者 | 工事の注文者(企業名、個人)を記載します。個人の場合は氏名が特定されない書き方(個人A、個人Dなど)で記載します。 |
4.元請または下請の別 | 元請け工事の場合は「元請」、下請け工事の場合は下請と記載します。 |
5.JVの別 | 共同企業体「JV(joint venture)」として実施した工事の場合は「JV」と記載します。 |
6.工事名 | 請け負った工事の名称を記載します。個人の住宅を工事した場合は「B邸内装工事」といったように、個人の氏名が特定されない書き方をします。一方、商業施設やビルなどはそのままの名称で記載して問題ありません。(例:東京病院内装工事、スカイビル内装工事など) |
7.工事現場のある都道府県及び市区町村名 | 工事現場の所在地を都道府県名から市区町村名まで記載します。 |
8.配置技術者の氏名 | 現場に配置された配置技術者の氏名を記載します。新規許可申請の場合は氏名を記載しなくても問題ありませんが、許可取得後に決算変更届で工事経歴書を提出する際は、氏名を記載します。 |
9.主任技術者または監理技術者の別 | 配置技術者が、主任技術者か監理技術者か、該当するほうに「レ印」を記載します。 |
10.請負代金の額 | 工事の請負代金を記載します。千円単位で請負代金の額を記載し、千円未満は切り捨てて記載して問題ありません。契約変更があった場合は、変更後の額を記載します。共同企業体(JV)の工事については、共同企業体全体の請負代金に出資の割合を乗じた額、あるいは分担した工事額を記載しましょう。また工事進行基準(工事の進捗状況で費用や収益を計上する)を採用している場合、請負代金と完成工事高が変動する場合があります。工事進行基準を採用している場合は、完成工事高を括弧書きで追記します。なお、「PC(プレストレストコンクリート構造物工事)」「法面処理」「鋼橋上部」に該当する工事が含まれる場合は丸をつけ、右隣にその代金のみ記載します。 |
11.工期 | 着工年月、完成年月または完成予定年月を記載します。 |
12.小計 | 記載した完成工事の件数、請負金額の合計を記載します。「PC」「法面処理」「鋼橋上部」が含まれる場合は、その請負代金の額の合計を右枠に記載します。 |
13.小計のうちの元請工事該当分 | 小計に元請工事の請負代金が含まれる場合は、元請工事代金のみを記載します。右枠は、「PC」「法面処理」「鋼橋上部」に該当した場合にその代金を記載します。 |
14.合計 | 請け負ったすべての工事の代金を記載します。複数ページある場合は最終ページに記載しましょう。 |
工事経歴書に記載する工事と対象期間は?
工事経歴書に記載する工事は、申請日の前事業年度中に完成した工事(未完成工事も含む)を記載する点に注意しましょう。すなわち、前年度に完成した工事、前年度に請け負った未完成工事を記載します。
事業年度が4月1日〜3月31日で2023年9月に申請を行う場合は、2022年の4月1日〜3月31日の工事を記載します。
工事経歴書に記載する順番
工事経歴書に記載する工事は、金額の大きい順に記載するのが基本です。しかし、経営事項審査を受ける場合と受けない場合とで記載する順番が異なるため注意しましょう。ここでは、工事経歴書に記載する順番をご紹介します。
経営事項審査を受ける場合
経営事項審査を受ける場合、工事を記載する順序は大きく3つのステップに分かれます。
【ステップ1】
まずは元請工事から記載します。ただし、すべての元請工事を記載する必要はなく、完成した元請工事の請負代金の合計の7割に達するまでを請負金額の大きい順に記載します。7割に達するまでに工事の請負代金合計が1,000億円を超えた場合、あるいは500万円未満の軽微な工事を10件記載した場合は、そこで記載を終了してOKです。
【ステップ2】
元請工事の残りの部分や下請工事を記載します。ステップ1と同様に、完成した工事の請負代金の合計の7割に達するまでを請負金額の大きい順に記載します。7割に達するまでに工事の請負代金合計が1,000億円を超えた場合、あるいは500万円未満の軽微な工事を10件記載した場合は、そこで記載終了です。
【ステップ3】
未完成工事を請負金額の大きい順に記載します。
経営事項審査を受けない場合
経営事項審査を受けない場合、完成した工事について元請、下請関係なく請負代金が大きい順に記載します。未完成工事があれば、同様に請負代金が大きい順に記載しましょう。
工事経歴書が認められないケース
工事経歴書は正しく記載しないと無効になる場合があります。ここでは、工事経歴書が認められないケースや注意点を解説いたします。
工事の種類が不明確
工事経歴書には「内装工事」「電気工事」「塗装工事」のように、対象となる工事を明確に記載する必要があります。工事の種類が明確でない場合、工事の内訳書や見積書といった具体的な工事の内容が確認できる書類を別途添付しましょう。そういった資料を用意できないと、工事経歴書が認められない場合があります。
請求書と入金の記録がずれている
よくあるミスが、記載金額のズレです。請求書と入金記録の金額が一致しない場合、信頼性が下がります。「ほかの工事と相殺して入金があった」「値引きが発生した」といった場合は、その理由を明らかにして変更後の金額を記載する必要があります。
審査基準日と工期がずれている
工期と審査基準日の計算が合わない場合も、工事経歴書が無効となります。例えば審査基準日を5月末、契約書の記載が「契約日5月18日、工期100日」であった場合、5月末時点で工事は完了していないため、完成工事として計上できません。
配置技術者に変更があったがその旨が記載されていない
施工中に配置技術者の変更があったにもかかわらず、その旨が記載されていないと工事経歴書が無効になる場合があります。変更があった場合は前任者の名前も記載しましょう。
また建設業法では配置技術者に関するルールがいくつか定められています。法律違反にならないよう、配置技術者に関するルールを再確認しておくと良いでしょう。
出典:「工事現場に配置すべき技術者」(国土交通省)
建設工事に該当していない
樹木剪定・庭木監理、緑地・公園管理など、建設工事に該当しないものは工事経歴書に記載できません。
まとめ
工事経歴書は前事業年度に行った工事(未完成工事も含む)を工種ごとに記載した書類です。建設工事の種類や工事名、請負代金など、工事に関する詳細な情報を記載します。
また、経営事項審査を受ける場合とそうでない場合で、記載に関するルールが異なるため注意が必要です。ほかにも、工事の種類が不明確だったり請求書と入金記録がずれていたりすると工事経歴書が認められないため、誤りがないように丁寧に作成しましょう。