主任技術者が現場にいないのはあり?非専任が認められるケースも解説

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主任技術者になった場合、1つの現場に常駐することになるのか、気になっている方もいるのではないでしょうか。 今回は、主任技術者が現場にいないことはあるのか、非専任が認められるケースはあるのかなどについて解説します。

主任技術者の専任が必要な現場とは

建設業法第二十六条によって、建設業許可が必要な工事には、元請・下請に関わらず主任技術者を配置するよう義務付けられています。

具体的には、公共性の高い重要な工事や、請負金額が一定以上(下請金額の合計が5,000万円以上の建築工事業または8,000万円以上の建築一式工事)の規模の工事が該当します。

「公共性の高い重要な工事」とは、以下のようなものが対象です。

・国又は地方公共団体が注文者である施設又は工作物に関する建設工事
・鉄道、道路、河川、飛行場、港湾施設、上下水道、消防施設、電気施設、ガス施設、学校、図書館、美術館、病院、百貨店、ホテル、共同住宅、公衆浴場、教会、工場等の建設工事(個人住宅・長屋を除くほとんどの施設が対象)

こうした工事では、主任技術者または監理技術者を専任で配置しなければなりません。

監理技術者の基本的な業務は、主任技術者と同じです。

ただし、監理技術者は下請負人の指導・監督も業務範囲に含まれています。主任技術者の上位資格ともいえる職種であるため、監理技術者がいる建設現場では、主任技術者を配置する必要はありません。

主任技術者と監理技術者との違いについて、詳しくはこちらをご覧ください。

監理技術者と主任技術者の違いは?役割と資格・経験などを解説

出典:e-GOV 法令検索「建設業法 第二十六条

「主任技術者が現場にいない」ことはある?

主任技術者は多くの建設現場で配置義務が課せられていますが、現場にいない場合もあります。

これは、主任技術者の「配置」は建設現場に常駐、つまり工事中、常に現場にい続けることを指すわけではないからです。

主任技術者を専任で配置しなければならないのは、「工事の施工が実際に行われている期間」 です。

これは工事現場で作業員や機械が動いている期間を指し、契約締結から竣工までの全期間が対象ではありません。実際に施工が始まる前の準備期間(契約後の書類整備や発注者との協議など)や、工事完了後の事務処理の期間は「専任設置の対象外」とされています。

また、主任技術者は誰でも簡単になれるものではなく、主任技術者になるまでに10年以上かかる場合もあります。そんな主任技術者を一つひとつの建設現場に常駐させるのは、人手や人件費の負担が大きすぎて現実的ではありません。

そのため、相応の理由があり、なおかつ所定の条件を満たせば、現場を離れることが認められているのです。

主任技術者が現場にいなくても良いケース

先述の通り、主任技術者は必ず建設現場に常駐しなければならないわけではありません。

ただし、いつでも好きなように出入りして良いわけではなく、現場を離れる理由があり、所定の条件を満たす必要があります。

どのような理由で、どんな条件を満たせば良いのか、主任技術者が現場にいなくても良いケースについて解説します。

主任技術者が現場を離れる条件

以下の状況に該当する場合、短期間であれば主任技術者が現場を離れても良いとされています。

・技術研さんのための研修・講習・試験などへの参加
・休暇取得 など

上記以外にも何らかの合理的な理由があれば、主任技術者が短期間現場を離れることが認められます。また、主任技術者が現場を離れても滞りなく工事が進むように、以下の条件を満たさなくてはなりません。

・主任技術者不在でも、適切に工事を進められる体制を構築しておく
・主任技術者不在時の体制について、発注者・元請・上位の下請などの了承を得る

「適切に工事を進められる体制」を構築するには、以下のような環境を整えておく必要があります。

・必要な資格をもつ技術者を代理人として配置する ・主任技術者と現場間で連絡が取れるようにしておく
・必要な場合は現場に戻れるようにしておく など

ただし、主任技術者にも研修を受けたり休暇を取ったりする権利があります。また、育児や介護などが理由で現場を離れる場合、現場に戻るのが難しいこともあるでしょう。

そのため、代理の技術者がいる場合は現場に戻らなくても良いなど、ある程度柔軟に対応できるとされています。

出典:国土交通省「監理技術者制度運用マニュアルについて

主任技術者の配置が不要の場合も

2020年10月に改正された建設業法にて、次の7つの条件をすべて満たした場合は、主任技術者の配置・常駐不要と決定されました。

1.特定専門工事に該当している
2.発注者と元請間で、書面によって合意が取れている
3.元請と上位下請間で、書面によって合意が取れている
4.元請・上位下請のいずれかの主任技術者が施工管理業務を行う
5.「4」の主任技術者が、その建設現場に専任で配置されている。また特定専門工事の建設現場にて指導・監督の実務経験を1年以上積んでいる
6.元請が主任技術者を置かない業者ではない
7.主任技術者を置かない業者が、さらなる下請契約を締結しない

「特定専門工事」とは、以下のいずれかの工事を指します。

・下請金額の合計が3,500万円未満
・発注者から直接工事を受注する場合は、請負金額の合計が4,000万円未満の型枠工事または鉄筋工事

なお、上記の7つの条件を満たした場合に主任技術者の配置が不要となるのは、下請業者に限られます。元請業者の場合は必ず主任技術者を配置しなくてはなりません。

元請あるいは一次下請の主任技術者が、二次下請の施工管理業務を行う建設現場では、主任技術者を配置する必要がなくなります。

専任工事でも主任技術者の非専任(兼任)が認められるケース

以下のすべての条件を満たせば、専任が必要な工事(請負金額4500万円以上の公共性のある工事)であっても、複数の建設現場の主任技術者を兼任できます。

・現在配置されている建設現場と密接な関係がある現場である
・現在配置されている建設現場と同じ建設業者が施工している
・現在配置されている建設現場と同じ場所、あるいは近隣(10km程度の範囲内)の建設現場である

「密接な関係がある現場」とは、同じ敷地内で行われる工事や現在の現場からつながる道路など、一体性・連続性がある現場のことです。

ただし、すべての条件を満たしていても、発注者の合意が得られなければ兼任できない可能性もあります。例えば十分な技術力がないと判断された場合、施工実績が不足している場合なども兼任が認められない場合があります。

兼任の必要性を感じた場合は、まず発注者に兼任したい旨を伝えて判断を仰ぐことが重要です。

出典:
国土交通省「二以上の工事を同一の監理技術者等が兼任できる場合
e-GOV 法令検索「建設業法 第二十七条

まとめ

多くの建設現場には主任技術者を配置する必要がありますが、相応の理由があり、所定の条件を満たせば現場を離れられます。また、主任技術者は専任が基本ですが、やはり条件を満たせば他の建設現場と兼任が可能です。

現場を離れる必要がある場合、他の建設現場との兼任を希望する場合は、条件に該当しているかどうかを確認しましょう。

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