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建築積算士とは?
建築積算士とは、設計図や仕様書をもとに、建築物の工事費を計算する専門家です。依頼する建築会社を比較したり、入札に使用される提示価格の基礎などを算定したりします。適正な見積もりや工事請負には欠かせない資格です。
建築積算士は、かつて国土交通省の認定資格でしたが、2001年より公益社団法人日本建築積算協会による認定資格となっています。下位資格には建築積算士補がありますが、学生を対象とした資格です。スキルアップを目指すには、建築積算士の取得を目指すことをおすすめします。
実務で建築積算を行っている人はもちろん、施工管理や事務職から建築積算士へキャリアアップする例も見られます。
建築積算士の資格を取得するメリット
上記で紹介したように、建築積算士の業務自体は有資格者でなくても行えます。とはいえ、資格を取得しておくことでスキルを客観的に証明できるため、転職への活用や年収アップ、さらなるキャリアアップを見込めるなどのメリットがあります。
官公庁への転職にも活用できる
建築積算士の資格は、建築関連の企業はもとより、官公庁への転職にも活用できます。
公共工事の発注では、適正価格での発注や入札を判断できる人材が必要なため、建築積算士には高い需要があります。建築積算士はかつて国土交通省が認定する資格であったため、官公庁の関連部署では認知度が高く、資格を活用しやすいでしょう。
年収アップを見込める
建築積算士の平均年収は400万円ほどです。
就職先や経験値によっては年収1,000万円を超えることもあります。資格を取得してプロフェッショナルとして経験を積むことで、年収アップが見込めるでしょう。
また、建築積算士の有資格者がいる会社は、公共工事の入札に有利です。なぜなら国土交通省が発注する業務への入札参加に必要な「測量・建設コンサルタント等業務競争参加資格審査」をはじめ、地方自治体などが発注する業務への入札で加点の対象となっているからです。
そのため企業にとって建築積算士は公共事業の入札をするうえでも必要な人材であり、有資格者に手当を支給している企業もあります。
さらなるキャリアアップを目指せる
建築積算においては、建築積算士の上位資格として建築コスト管理士が設けられています。
建築積算士は建築過程における積算のみを扱います。建築コスト管理士は、建築積算士よりも広い範囲である企画・構想や廃棄までを見越したコストマネジメントを扱います。
建築コスト管理士へキャリアアップすることで、活躍のフィールドや業務の裁量を大きく広げられるでしょう。活躍の幅が広がるにつれて年収のアップも期待できます。
建築積算士の受験資格や難易度について
建築積算士の試験は年1回で、一次試験は10月、二次試験は翌年1月に実施されます。ここからは、建築積算士の取得を目指す方へ、受験資格や難易度を紹介します。
建築積算士の受験資格
建築積算士の受験資格は、受験年度の4月2日時点で満17歳以上であることのみです。学歴や職歴にかかわらず、すべての学生や社会人が受験できます。
なお、以下に該当する場合は一次試験が免除されます。
・建築積算士補または建築コスト管理士の有資格者
・一級建築士、二級建築士及び木造建築士
・一級、二級建築施工管理技士
・日本建築積算協会が開校している積算学校の卒業生
・過去に建築積算士一次試験の合格者
一次試験の免除は、二次試験の受験申し込み時に証明書類の添付が必要です。一次試験の免除を受ける場合は準備しておきましょう。
建築積算士の試験内容と形式
建築積算士に求められる知識は以下のとおりです。
・生産プロセス
・工事発注スキーム
・設計図書構成
・工事費構成
・積算業務内容
・数量積算基準
・標準内訳書式
・主要な市場価格
・データ分析と積算チェック
・施工技術概要
・LCC・VE概要
・環境配慮概要
建築積算士の一次試験は学科のみで、内容は基本知識を問うものです。建築積算士ガイドブック全章から出題されます。
問題は四肢択一の50問で、試験時間は3時間です。
二次試験は実務知識を問うもので、短文記述試験と実技試験があります。一次試験通過者のみ受験可能です。
短文記述試験は建築積算士ガイドブックのうち第1章〜第4章、第9章〜第15章より2問が出題され、それぞれ200文字で回答します。試験時間は1時間です。
実技試験は建築積算士ガイドブックのうち第5章〜第8章、巻末の基準類からの出題です。①躯体(コンクリート、型枠、鉄筋)、②鉄骨、③仕上、④内訳明細作成・工事費算出の4分野について、図面に基づき数量を計測・計算、内訳明細を作成します。実務よりも正確さが求められる試験になります。
建築積算士の合格率・難易度
建築積算士の過去3年間の合格率は、以下のように推移しています。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
2022年 | 390人 | 223人 | 約57% |
2021年 | 361人 | 244人 | 約67% |
2020年 | 323人 | 171人 | 約52% |
建築積算士試験には例年50〜60%が合格しており、最難関の資格ではありません。しかし、すでに建築関係の仕事に従事している人も受験していると考えると、誰でも合格できる試験でもありません。未経験者には難しい試験となるでしょう。
なお、合格基準については公開されていませんが、6割程度の正答率が求められるといわれています。また、各科目で2段階選抜もあるようです。
建築積算士の試験に合格するには?
建築積算士の試験に合格するために有効な勉強法は、建築積算士ガイドブックの読み込みと過去問での実践学習です。試験範囲や内容が明確なため、漏らさず勉強しておけば合格できます。
建築積算士ガイドブックを読み込む
建築積算士の試験は、一次試験・二次試験ともに建築積算士ガイドブックから出題されます。試験要項に記載されている版以降のガイドブックでの勉強は必須です。ガイドブックは日本建築積算協会で購入できます。
ガイドブックでは積算の知識のほか、建設産業や建築資材、業界知識なども取り扱っています。ガイドブックを読み込めば、実務経験者以外でも十分に合格を狙えるでしょう。
過去問をひたすら解く
建築積算士の試験合格には、知識を入れるだけでなく実践的な練習をする必要があります。そのためには、過去問を利用しましょう。
日本建築積算協会のサイトには、過去10年分の問題と解説が公開されています。ガイドブックのどこから出題されているかも併記されているため、参照しながら学んでいくと効率的です。
試験問題の出題傾向は大きく変わらないため、過去問を完全にマスターしておくと合格に近づけるでしょう。
独学での勉強期間は1年ほどかかる
建築積算士の試験は幅広い知識を問われますが、実務経験者であれば難しい試験ではなく、1〜2か月ほどの勉強期間で資格取得を狙えるでしょう。建築関係の業務に携わっているなら、3か月前後が目安です。
ただし建築業界の経験がまったくない場合は、建築部材や建築用語、基礎的な業界知識から学ぶ必要があるため、難易度は上がります。図面を読んで内容を理解し積算ができるようになるまでには、半年〜1年程度の勉強が必要です。
未経験の場合には、日本建築積算協会の各支部が実施している講習会や研修会に参加するのも良いでしょう。
まとめ
建築積算士は、建築工事がある以上需要が期待できる職種です。資格を取得することで、年収アップや転職も目指せるでしょう。資格試験は年1回実施されます。合格率は50〜60%で、実務経験者であれば難しい試験ではないでしょう。キャリアアップにも活用できる資格なので、ぜひ取得に挑戦してみてください。