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構造設計は「やめとけ」といわれる理由
構造設計は建築設計の中でも特に専門性が高く、重要な職種として知られています。しかし、実際に構造設計の現場で働く設計士からは「やめておいたほうが良い」というアドバイスを聞くことも少なくありません。
ここでは、その具体的な理由について詳しく解説します。
意匠設計・設備設計との調整が難しい
構造設計の大きな課題のひとつが、意匠設計や設備設計との調整作業です。建物の安全性を確保しながら、意匠設計者が求める建物の美しさや、設備設計者が必要とする配管やダクトのスペースを両立させなければなりません。
例えば、意匠設計者が提案する大きな開口部や薄い壁は、建物の構造強度を弱める可能性があります。また、設備設計者が要求する配管用の開口は、梁や柱の配置に影響を与えることがあります。このような相反する要求を調整しながら、建物の安全性を確保しなければならず、時に厳しい折衝を強いられることもあるのです。
責任が重い
構造設計者は、建物の安全性にも直接関わるポジションです。設計ミスや計算の誤りは、最悪の場合、建物の倒壊や人命の損失につながる可能性があります。特に地震大国である日本では、地震に対する構造計算の精度が厳しく問われます。
また、設計した建物は数十年にわたって使用され続けるため、将来的な問題が発生するリスクも考慮しなければなりません。こうした責任の重さは、構造設計者に大きな精神的プレッシャーを与えることになります。
業務量が多い
構造設計者の業務は多岐にわたり、その量も膨大です。構造計算や構造図面の作成はもちろん、計算書類の作成、他部署との調整、確認申請の対応、現場での立ち会いなど、さまざまな業務をこなす必要があります。
特に、構造計算は時間がかかる作業で、1つのミスも許されないため、何度も確認作業を行う必要があります。また、工程の遅れは後続の意匠設計や設備設計にも影響を及ぼすため、常に時間的なプレッシャーにさらされています。
地道な作業が多い
構造設計の仕事の大半は、地道な作業の繰り返しです。構造計算書のチェックや図面の確認作業など、細かい作業が続きます。
また、建築基準法や構造計算規準の改定にも常に注意を払う必要があり、新しい知識の習得も欠かせません。このような地道な作業の連続は、単調に感じられることもあり、モチベーションの維持が難しくなることもあります。
構造設計に向いている人
構造設計として活躍するためには、いくつかの資質やスキルが必要となります。構造設計に向いている人の特徴を詳しくみていきましょう。
建築に対する熱意がある
建築物の構造設計においては、単に計算や設計をこなすだけではなく、より優れた構造を追求する姿勢が重要です。建築や構造に対する深い興味と知的好奇心があることで、新しい技術や工法を積極的に学ぶようになり、より安全で効率的な設計が可能になります。こうした熱意は、長期的なキャリアを支える原動力にもなります。
イメージを落とし込む設計力がある
構造設計者には、顧客の要望や意匠設計者のビジョン、設備設計の要件を理解し、それらを実現可能な構造として具現化する能力が求められます。抽象的なイメージを具体的な設計図面に変換する力や、3次元的な空間把握能力が必要不可欠です。
計画的に遂行するスケジュール管理能力がある
建築プロジェクトには必ず期限があり、そのなかで質の高い構造設計を完遂する必要があります。顧客から提示された納期を守りながら、設計プロセスを適切に管理し、必要に応じて関係者との調整を行う能力が重要です。
コミュニケーション力が高い
構造設計は単独で完結する仕事ではありません。意匠設計者、設備設計者、施工者など、多くの専門家との協力が必要です。技術的な内容を分かりやすく説明する力や、異なる専門分野の人々と円滑に情報を共有できるコミュニケーション能力が求められます。
責任感が強い
先述の通り、建築物の構造設計は、人々の生命と安全に直結する重要なポジションです。地震や台風などの自然災害に耐えうる安全な構造を実現するため、細部まで慎重に検討し、確実な計算と設計を行う責任感が不可欠です。妥協を許さない姿勢で、安全性を追求できる方が向いています。
構造設計の魅力
構造設計の仕事は、確かに大変な面もありますが、魅力的な要素も数多く存在します。
ものづくりの喜びや達成感を得られる
構造設計の仕事は、自分のアイデアと計算が実際の建物として形になっていく過程を見られる、やりがいのある仕事です。設計図面から徐々に建物が立ち上がっていく様子を目の当たりにすると、言葉では言い表せないほどの喜びと達成感を味わえるでしょう。
さらに、完成した建物を家族や知人に「この建物、私が設計したんだよ」と伝える瞬間は、構造設計者ならではの特別な喜びです。また、新しい建築技術や材料が次々と登場するなかで、常に自己研鑽を続けることで、着実な成長を実感できる職種でもあります。
幅広いジャンルの建築物に関われる
構造設計者として働くことで、住宅、オフィスビル、商業施設、文化施設など、実にさまざまな種類の建築物の設計に携われます。建物のタイプによって求められる構造や工法が異なるため、常に新しい技術や知識に触れられるでしょう。
このように多様な建築物に関われることは、単調な仕事に飽きてしまう心配がなく、むしろ新しいチャレンジに満ちた刺激的な生活を送れることを意味しています。
年収が高い
構造設計は、専門的な知識と技術を必要とする職種であり、収入面でも恵まれています。厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」によると、構造設計を含む建築設計技術者の平均年収は641.6万円程度となっています。
これは、国税庁が発表している給与所得者全体の平均年収478万円と比較しても、かなり高い水準です。経験を積み、より高度な設計案件を担当できるようになれば、さらなる収入アップも見込めます。
出典:厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「建築設計技術者」
出典:国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」
まとめ
構造設計は意匠・設備設計との調整の難しさや重い責任、多岐にわたる業務量など、確かに課題の多い職種です。しかし、建築への熱意があり、イメージを具現化する設計力やコミュニケーション力、責任感の強い人には適した職種といえます。実際の建物として形になる喜びや達成感、幅広い建築物のデザインに関われるおもしろさ、好待遇など、魅力も豊富です。
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