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プラントエンジニアリング業界とは?
プラントとは日常品や鉄鋼の製造から、石油やガスといったエネルギー精製などの工場設備のことを指します。プラントに勤務する技術者をプラントエンジニアと呼び、プラントの設計や建設工事、メンテナンスなどの業務を行うのがプラントエンジニアリングです。
プラントエンジニアリング業界は、海外での工場建設にも携わっており、国や化学メーカー、電力業界、鉄鋼業界、水業界、産業廃棄物業界などといった大きな組織を相手に仕事をすることになります。
プラントエンジニアリング業界の現状と今後の展望
ここではプラントエンジニアリング業界の現状と、今後の展望について紹介します。
受注高は増加傾向にある
過去10年間(2011~2021年)の受注高の推移はほぼ横ばいですが、2020年から2021年の2年間を見ると化学プラントの伸びが大きくみられました。
2022年11月の受注高を前年同月比で見てみると、化学プラントに加え、製鉄プラント、電力プラントシステムなどでも増加がみられます。
各プラントの増加率は以下のとおりです。
・化学プラント:+50.2%増・製鉄プラント:+12.2%増
・電力プラントシステム:+4.1%増
・その他産業プラント:+15.3%増
出典:経済産業省「エンジニアリング業の動向」
プラントエンジニアリング業界全体の受注高に関しては、5兆~6兆円を推移しており、ばらつきなく安定しているといえます。
今後の需要は特に海外で大きい
海外でのプラント建設はエネルギー需要の上昇に伴って、受注数が拡大すると予想されます。
世界最大の天然ガス産出国である米国では、新たな化学プラントや液化天然ガスプラントの需要が高いです。経済成長が著しいアジア・中東では、インフラシステムに関わる電力プラントの需要が見込まれています。
国内の新しいプラント建設においては頭打ちの状態です。とはいえ今後も改修やメンテンナンスなどで一定の需要が想定されます。プラントエンジニアリングはプラントを建設して終わりではなく、その後の施設維持にも関わるからです。
ただし、世界経済や環境意識の高まりなど世界情勢の影響を受ける可能性もある業界です。そのため、グローバルな視点を持っておくことが大切といえます。
プラントエンジニアリング業界に属する企業の種類
プラントエンジニアリング業界には、主に下記3つの企業の種類があります。
・EPC
・サブコン
・施工会社
それぞれの特徴についてみていきましょう。
EPC
EPCとは下記の単語の頭文字を組み合わせた略称であり、プラントの設計から建設までを一括で請け負う「元請け企業」を指します。
・E=Engineering(設計)
・P=Procurement(調達)
・C=Construction(建設)
「E」の設計とは、クライアントの要望を受けてプラント建設に関する企画を立案し、基本設計・詳細設計を行う工程です。
「P」の調達は、クライアントの要望と予算の兼ね合いをみながらプラント建設に必要な資材や機器を選定・発注し、現地に輸送する工程を指します。
「C」の建設は、設計をもとに実際にプラントを建てる工程です。プラントの外装工事だけでなく、配線・配管や空調設備など、すべての工事が含まれます。
プラント建設は非常に大掛かりであるため、ひとつの企業がすべての業務を担うことができません。そこで、EPCがリーダーとなって各企業に業務を割り振りし、プロジェクトを進めていきます。
サブコン
サブコンとは「subcontractor」の略称であり、プラント建設の一部の業務を担う下請け企業を指します。
排水・空調などの設備周りの工事、杭工事、足場工事、防水工事など、企業によって得意とする分野が異なります。
また、似た業種であるゼネコンとの違いについては、以下の記事を参考にしてください。
施工会社
施工会社とは、EPCやサブコンからの依頼で工事を行う「孫請け企業」を指します。プラント建設では土木工事や配管工事、電気工事などさまざまな工事が発生しますが、いずれも専門的なスキルや資格が必要です。
そこで、EPCやサブコンは、各工事に特化した施工会社に工事を依頼します。
プラントエンジニアリング業界の仕事内容
プラントエンジニアの仕事は、工場設備の企画や設計、資材調達、システム開発、施工管理と多岐に及びます。それぞれの仕事内容は以下のとおりです。
・工場設備の企画や設計
生産規模や製造する製品に合わせて最適なプラントを提案し、プラント建設の設計を行います。作業の流れや全体の構造を決めたら、建築・電気・配管など各専門分野に分かれて設計を行います。
・資材調達
設計をもとに発電装置、配管、電気設備、制御システムなどの設備機器や資材を発注します。発注費用を予算内に抑えながら、工期に合わせて建設現場に機器資材を送り届けなければなりません。また、搬入時の検査なども行います。
・システム開発
プラントを構成する電気供給システムや制御システムなどを開発します。近年、IoTなどの最新技術やビックデータを活用するシステム開発が活発になっているので、最新の知識が求められる業務です。
・施工管理
プラントが設計通りに機能するように施工し、管理・保全を行います。建設工事の施工管理と業務内容は変わらないものの、危険物などを扱うため高度な技術が求められる仕事です。
プラント施工管理の仕事内容については、下記で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
大規模な工事に携われるプラント施工管理の仕事内容と魅力を紹介!
プラントエンジニアリング業界で働くやりがいやメリット
ここでは、プラントエンジニアリング業界で働くことのやりがいやメリットについて紹介します。
社会貢献度の高い仕事に就ける
社会を支える重要なインフラである石油やガス、電気などを生み出すためにはエネルギープラントが必要不可欠です。また、廃棄物や排水の処理にもプラントは欠かせません。
このように、社会基盤の根底となる設備の建設に携われる業務は、社会貢献度の大きさを実感しやすく、やりがいを感じる方は多いです。
海外を視野に入れて働ける
日本のプラントエンジニアリング企業は、海外でのプラント建設に主軸を移しています。海外の売上比率が7割以上という企業も多く、海外赴任や海外出張が多い業界です。
グローバルなビジネスに携わりたい、海外で働くチャンスがある企業に勤めたい方はやりがいを感じられるでしょう。
地図に残るものを作れる
プラントは何もない土地に建設され、その場所に長く残ります。何もないところから地図に残るものを作れるため、自分の成果を実感しやすく達成感が得られるでしょう。
事業規模が大きく、スケールの大きな仕事に携わっているという満足感を得られるのも魅力です。
スキルを身につけて成長できる
海外赴任や出張が多い特性上、海外の関係者と接する機会が多いため、語学力やコミュニケーション力を鍛えられます。
またプラント建設は、ほかの業界では経験できない規模のプロジェクトに携わるため、リーダーシップを求められる仕事でもあります。仕事を通じてマネジメントスキルがつくなど、日々の成長を実感できるでしょう。
「さまざまなスキルを身につけて成長したい」といった向上心がある方にとって、やりがいを感じられる仕事といえます。
プラントエンジニアリング業界の有名企業5社
ここでは、プラントエンジニアリング業界の企業のうち、有名企業を5つ紹介します。
日揮ホールディングス
日揮ホールディングスは、世界80か国で20,000件以上のプロジェクト遂行実績をもつ、日本最大手の総合エンジニアリング企業です。エネルギートランジョンや都市インフラなど幅広い分野に進出しており、売上高・純利益ともに業界最高となっています。
機能材製造事業にも力を入れていて、流動接触分解触媒や排煙脱硝触媒などの国内シェアNo.1を誇っています。
千代田化工建設
千代田化工建設は、日揮ホールディングスに次ぐ業界第2位の総合エンジニアリング企業です。豊富な実績と高い技術により、プラント建設やインフラ整備を設計から運転・保守までサポートしています。
また、世界で初めて国際間水素大量輸送を可能にした「SPERA水素技術」の実証事業にも成功しており、国内外から注目されています。
東洋エンジニアリング
東洋エンジニアリングは、1960年代から世界中でプラント建設に携わってきた大手のエンジニアリング企業です。石油化学プラントをはじめ、医療・食品などの産業プラント分野も手掛けており、世界60か国以上で数千件のプロジェクトを成功に導いています。
海外事業をメインとしており、中東やブラジルなどにも市場を拡大しているほか、BRICsなどの新興国でも豊富な実績をもっています。
レイズネクスト
レイズネクストは、新興プランテックとJXエンジニアリングの合併によって生まれたエンジニアリング企業です。石油や医療品、食品など幅広い分野に対応しており、新規プラントの建設だけでなく建設後の試運転やアフターフォローも行っています。
また、既存プラントの寿命を伸ばしたり、耐震性や能力を向上させたりする改造・改修工事にも対応できるのが特徴です。
太平電業
太平電業は、電気工事会社から始まったエンジニアリング企業で、火力発電・原子力発電・再生可能エネルギー発電などの分野に強いのが特徴です。
プラント建設から運転、補修、メンテナンスや解体まで、一貫してサポートしています。また、発電プラントでの豊富な実績を生かした人材育成も手掛けています。
プラントエンジニアリング業界であると有利な資格
プラントエンジニアリング業界で働くにあたって、あると有利な資格にはどんなものが挙げられるのでしょうか。一例として、電気、土木、配管に関する資格を紹介します。
電気工事施工管理技士
電気系のプラントエンジニアの主な役割は、プラントへの電力供給です。そのため、電気工学もしくはそれに付随する知識が求められます。
電気工事施工管理技士の資格があると、発電設備工事や送配電線工事、構内電気設備工事などに携わることができます。電気工事施工管理技士は、工程・品質・原価・安全という4つの施工管理をしながら電気工事を行うプラント建設の現場に必要不可欠な存在です。
電気系のプラントエンジニアとして働くなら、資格を取得しておくと有利になるでしょう。
土木施工管理技士
土木系のプラントエンジニアは、プラントや道路設備、湾岸施設などの設計・施工、管理を行います。土木工学系の専門的な知識が求められるため、土木施工管理技士の資格を取得しておくと良いでしょう。
土木施工管理技士は2級を取得すると、「営業所ごとに配置する専任の技術者」及び「建設工事における主任技術者」として認められます。さらに1級を取得すると「営業所ごとに置く専任の技術者」及び現場の「監理技術者」として認められることになります。
配管技能士
配管技能士の資格には建設配管作業とプラント配管作業があり、プラント配管作業の資格を取得していれば専門的な知識を持つ技士としてプラント工事に携われます。
この資格があると、プラントに張り巡らされているガスや蒸気、水などを配送する配管の施工に必要な知識と技能を有していることを証明可能です。
未経験からでもプラント技術者や施工管理を目指せる!
「プラントエンジニア業界で働きたいけれど、未経験だから…」という方もプラント技術者や施工管理を目指すことは可能です。
共同エンジニアリングでは、研修やサポート体制を整えており、未経験の方でもプラントや世の中のインフラを支える仕事に携われます。アシスタント業務をこなしつつ、将来的にはプラント技術者として働くことを目指せるでしょう。
研修では建設業界に関する基礎知識を身に付けられます。入社後のコースによっては、各種CAD研修も実施しており、実際の現場で役立つスキルを手に入れることもできます。
国家資格の施工管理技士を取得して施工管理を目指すことも可能なので、プラント技術者に興味がある方は応募してみてください。
まとめ
プラントエンジニア業界の概要や仕事内容、今後の展望について紹介してきました。プラント建設は海外を中心に需要が高まっているうえ、国内においても一定の需要があります。
これまでは石油や天然ガスなど、化石燃料をベースとしたプラントの建設が事業の中心でした。しかし、今後は脱炭素化の影響でCO2回収技術がプラント事業を発展させるうえで重要となるなどの変化も予想されます。
社会のインフラを支える重要な役割を持つ仕事に携われるプラントエンジニアリング業界には、未経験からも挑戦できます。まずはアシスタントとして働いてみてはいかがでしょうか。