建設業で若者離れは当たり前?人手不足の原因や将来性について解説

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建設業において「若者離れは当たり前」といわれるのは、建設業は労働環境や労働条件が良くないというイメージがあることに起因しています。実際に建設業には若い世代の就業者の割合が少なく、少子高齢化が進むなか、将来的な担い手不足は業界の大きな課題です。 この記事では、建設業での若者離れの原因や、業界の実態をご紹介します。若者離れを解消するために行われている施策や、良い条件で働くための企業選びのポイントも知っておきましょう。

建設業における若者離れの現状

なぜ建設業では若者離れが進んでいるのか、その背景と現状をご紹介します。

建設業は人手不足が深刻化している

建設業は、若者に限らず人手不足が深刻化しています。

厚生労働省「一般職業紹介状況」(2023年6月分)によると、全業種の有効求人倍率(パート含)の実数は1.23倍です。しかし、建設業に関連する業種においては、有効求人倍率(パート含む常用)が「建築・土木・測量技術者」で5.00倍、「建設・採掘従事者」で5.07倍に達しています。

労働人口自体が減少するなか、労働環境に対するマイナスイメージから就業先に選ばれにくいことが人手不足につながっているようです。特に若者は、労働環境やワークライフバランスを重視する傾向があるため、建設業が敬遠される傾向にあります。

建設業における29歳以下の若者の割合は約1割

国土交通省がまとめた資料「最近の建設業を巡る状況について」によると、建設業就業者は高齢化が顕著です。55歳以上の就業者は35.9%ですが、これからを担う29歳以下の就業者は11.7%(2022年時点)に留まっています。

団塊の世代が75歳を迎える2025年には、さらに働き手自体が少なくなります。人手不足の進行は避けられず、今後も建設業ではかなりの人数が不足するでしょう。若手人材不足の解消は、建設業界の大きな課題となっています。

建設業に入職しても辞めてしまう

建設業は、若者の就業者が少ないだけではありません。入職後短期間で辞めてしまうことも、人手不足に拍車をかけています。

厚生労働省がまとめた「新規学卒者の離職状況」(平成31年3月卒業者)によると、新卒者が3年以内に離職した割合は、全産業で3割を超えています。せっかく若い人材を確保できても定着しないという課題があり、建設業も例外ではありません。

特に、高卒後入社者の3年以内離職率は、全産業35.9%に対して建設業は42.2%と平均より6%ほど高くなっています。

建設業へのイメージと実態は大きく異なる

建設業が若者から敬遠される理由には、「きつい・汚い・危険」という3Kが挙げられるでしょう。しかし、建設業はかつてのイメージとは異なり、労働環境は変わりつつある状況です。ここからは、建設業にもたれているイメージと実態との差をご紹介します。

雇用条件は改善されつつある

かつて、建設業界は下請け構造と利益を優先する構造により社会保険に未加入の事業者が多く見られ、問題視されていました。そこで国は2017年以降、建設業界においても社会保険加入の強制を進め、2020年の改正建設業法において社会保険加入を義務化しています。

建設業界は雇用条件が良くないというイメージがありましたが、現在では改善されており、人材確保のために福利厚生を整える企業も増えました。

また、国や業界は労働安全衛生法令の遵守徹底や技術研修の実施、事故防止対策の強化などを推進することで、就業者が安全・健康に働けるよう取り組んでいます。

新3K(給与・休暇・希望)が注目されている

建設業は、厳しい労働環境で働かなければならないということで、若者には敬遠されがちでした。

その状況を変えるため、国は「給与・休暇・希望」を建築業の新3Kとして実現させようと、直轄工事において以下のような取り組みを実施しています。

・下請企業からの見積もりを尊重する企業を優位に評価する「労務費見積もり尊重宣言」促進モデルの発注
・「週休2日対象工事」の発注や適正な工期設定のための指針策定
・ICTや新技術などの活用推進

さまざまな人と関わり多くのことを得られる

建設業は危険と隣り合わせということもあり、危険な行動に対しては叱ってくれる先輩が必ずいます。現場でのOJTで指導を受けられることは、経験の浅い若者には重要な成長の機会といえるでしょう。

また、建設業は多くの会社がひとつになって建築物を作り上げていきます。業務ではさまざまな人と関わる機会があり、それだけ得られるものが多いことも魅力です。

建設業で若者離れを解消するための企業の取り組み

建設業の若手人材不足解消に取り組んでいるのは、国だけではありません。建設業の企業でも若者離れを解消するべく、さまざまな取り組みを始めています。

働き方改革を推進

建設業は、働き方改革関連法施行後も特別な事情がある場合は時間外労働が延長可能で、残業に関する規制が緩い業種でした。しかし、2024年4月より、他業種同様に原則月45時間かつ年360時間までの残業上限が設定されます。

また、特別条項付き36協定の場合でも、以下の上限規制が適用になります。

・時間外労働が年720時間以内
・時間外労働+休日労働の合計が月100時間未満
・時間外労働+休日労働の合計が「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」がいずれも1か月あたり80時間以内
・時間外労働が月45時間を超えられるのは、年6か月まで

月の残業時間も細かく上限が設けられることで、ワークライフバランスを保ちやすくなります。建設業の人材不足の解消効果も期待できるため、企業側でもこれを受けて長時間労働を排除し、働き方改革を進めています。

建設DXの推進による生産性の向上

建設業界の課題として、生産性が低く長時間勤務が発生しやすいことが挙げられます。その解決糸口として期待されているのが、BIM/CIMやITツールを活用した建設DXの推進です。

BIM/CIMは、3次元モデルを活用して、建設生産・管理の効率化や高度化を目指したシステムで、長時間労働からの脱却や従事者のモチベーションアップにつながります。

また、業務のデジタル化による業務負担軽減や、テレワーク環境の整備も進められています。建設業は現場作業が中心でテレワークは難しいとされてきましたが、施工管理などデスクワークの必要な業務は一部テレワーク化が可能で、多様な働き方を実現している企業も見られます。

若者離れが深刻な建設業において良い条件で働くには?

建設業は若者離れが当たり前といわれています。しかし、若手を確保したいと考える企業では、労働環境や福利厚生を改善する動きが見られるため、会社の選択次第で良い条件で働くことは可能です。

良い条件で働ける企業を見つけるには、どのような点に着目すれば良いかをご紹介します。

働き方改革を推進する会社を選ぶ

良い条件で働くには、働き方改革を推進する会社を選ぶことが大切です。

業務効率化を目指せるBIMやCIM、ITツールの導入を積極的に進めている企業は、働き方改革を推進していることが考えられます。

また、建設業は納期や人手不足の関係から休日が少ない傾向です。完全週休2日制の導入に積極的かどうかも、働き方改革を推進しているかの判断基準となります。

福利厚生や手当が充実している会社を選ぶ

福利厚生や手当が充実している会社は、従業員により良い環境で働いてほしいと考えていると判断できるでしょう。また、金銭的な面でもメリットがあります。

健康保険や厚生年金保険などの法定福利厚生だけでなく、交通費や食事手当、家族手当などの法定外福利厚生が充実している会社がおすすめです。

まとめ

建設業はネガティブなイメージから若者離れが起こっていましたが、法改正や働き方改革の推進により、労働環境は改善されつつあります。かつての「きつい・汚い・危険」の3Kから、「給与・休暇・希望」の新3Kを目指すべく、国や企業がさまざまな施策を講じていることで、変革を迎えているといって良いでしょう。若者が建設業で良い条件で働ける企業も増えています。