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ビルメンテナンスの仕事内容
ビルメンテナンス業の仕事内容は、大きく以下の4つに分類されます。
設備管理
ビルメンテナンスの設備には「電気通信」「空調」「給排水」「消防」「昇降機」が含まれます。これらの設備ごとに、運用監視やメンテナンスを行うことが主な業務です。近年ではシステム化が進み、ビル内の設備をコンピューターで一元管理する仕組みを導入しているケースも増加しています。設備管理の業務には、ビル内の設備を包括的・連動的に管理できる専門知識も必要です。
衛生環境管理業務
衛生環境管理業務では、ビル内外の清掃や空調・水質等の管理を担います。ビルの清掃は、床・天井・壁など用途に合わせた専用の清掃機器を使用します。一般的な清掃用品よりもパワーが大きいため、清掃中の人との接触や、ビル設備の損傷を起こさないように制御するスキルが求められます。また、高所での作業も多く、安全管理意識も必要です。
空調や水質の管理業務は、清掃業務に付随して行う業務であり空気環境測定や水質調査などが挙げられます。主に、関係者以外が立ち入らない貯水槽エリアや空調ダクト、配管エリアが作業箇所です。ビル内の空気環境を定期的に測定し、必要な機関へ報告する必要があります。
このほか、ネズミや昆虫の駆除や防除のための害虫駆除業務や、ビル内の一般ごみの収集・運搬といった廃棄物処理業務も行います。
建物・設備保全業務
「建物・保全業務」とは、建物全体の安全を確保する業務です。日々のメンテナンス記録や顧客からの要望をもとに、設備の経年劣化や消耗を把握し、適宜対応を行います。発電機械やボイラー、冷凍機などのビル主要設備の法廷保守点検を行いつつ、建物の空気環境や飲料水貯水槽の清掃や水質検査といった衛生環境管理業務に関連する作業も行います。
警備防災
警備防災業務を通して、ビルと利用者の安全を守る業務もビルメンテナンス業の役目です。ビルに常駐し、防犯・防火業務にあたります。近年では、防犯・防火の分野でも自動化・システム化が進んでおり、防災システムの監視や異常時対応などの業務も求められます。「防犯」「防火」の分野であることから、消防法に基づく各種計画書の作成や防火管理士としての知識も必要です。
ビル管理責任者(建築物環境衛生管理技術者)
ビル管理責任者(建築物環境衛生管理技術者)は、特殊な建築物のメンテナンスを統括する業務です。「ビル管理士」ともいわれます。「3,000平方メートル以上」の特定建築物において選任が必須とされている資格であり、常に一定数の需要が見込まれます。
主に特定建築物における「環境衛生の維持管理」に従事します。資格の取得には「2年以上の実務経験」と「試験・講習での合格」が条件となるため、有資格者は高い信頼が得られます。
ビルメンテンスの平均年収は約430万!
ビルメンテナンス業の仕事内容を紹介しましたが、ここで気になるのが給料面です。下記で、給料相場と平均年収について紹介します。
ビルメンテナンスの給与相場
ビルメンテナンス業の年収は、全国平均で「429.5万円」です。(※1)また、給与月額は「23.5万円」(※2)
パート・アルバイトの場合は時給「992円」で、派遣社員は時給「1,292円」です。
※1・2:参照元:「ビル施設管理」(厚生労働省・職業情報サイトjobtag)
給与水準には大きな差がみられる
ビルメンテナンス業の給与水準には、大きな差が見られます。理由として、「分野が多岐にわたること」「業務内容によって相場が変化すること」「有資格者への待遇」「賞与の有無」が関係しています。
また、他職種と同様に「地域による給与差」も生じます。アルバイトの場合で比較すると、平均時給が最も高いのは東京都で「1,173円」、最も低いのは愛媛県で「801円」と、372円の差があります。
ビルメンテナンスで年収を上げる方法
ビルメンテナンスとして働くうえで年収を上げるには、資格を取得する方法と手当で収入を増やす方法のふたつがあります。
ここでは、それぞれの方法について紹介します。
資格を取得する
ビルメンテナンス業で年収を上げる方法のひとつとして、資格の取得が挙げられます。ビルメンテナンス業は携わる分野が広く、専門性が高い職種です。そのため、ビルメンテナンス業に関する資格は多く存在しており、有資格者はその分の資格手当が支給される傾向にあります。中でも、ビルメンテナンス業の4つの神器とされている資格があるので、下記で紹介します。
第2種電気工事士
「第2種電気工事士」は電気工事を行う際に必須の資格です。ビルに電気は必需品であり、ビルメンテナンス業にとって有効な資格です。第2種では「600V以下で稼働する設備」に携われます。第2種を取得しておくと、ビルのほかにも商店街や住宅に関する電気工事も行えます。
2級ボイラー技士
2級ボイラー技士は、給湯やビル内の空調の熱源となるボイラー修理に必須な資格です。ボイラー技士を有していないと、ボイラーに関する業務は一切行えません。
2級ボイラー技士を取得すると「25㎡未満のボイラー」に携われます。また「2級ボイラー技士」は、より上位のボイラー資格を受験する際の必須の資格でもあります。
危険物取扱者乙種4類
危険物取扱者乙種4類は、引火の可能性があるほとんどの危険物を取り扱える資格です。(ガスを除く)「乙4」ともいわれています。
「乙種4類」があれば、危険物の約8割が取り扱えるため、他業界・他職種でも重宝される資格です。未経験でもテキスト学習のみで合格が狙える難易度であり、社会人に人気の資格でもあります。また、乙種4類より難易度の低い資格に「丙種」があるため、丙種からのステップアップを踏む勉強方法も有効です。
第3種冷凍機械責任者
第3種冷凍機械責任者は、冷凍に関わる高圧ガスを製造している設備での保安業務を行います。第3種では「1日100トン未満の冷凍能力のある設備」に限定されます。
冷凍機械責任者は合格率が低い資格のため、計画的な学習が必要です。資格合格に向けた講習に参加すると、出題傾向や出題される可能性が高いポイントを教えてもらえるため必要に応じて参加してみましょう。
手当で収入を増やす
ビルメンテナンス業において、変動手当で稼ぐ方法も、年収を上げるためのひとつの手段です。代表的な手当として「残業手当」「夜勤手当」「宿直手当」が挙げられます。ビルメンテナンス業は業務内容によって夜間作業となる場合があるため、時給が高くなる夜間勤務を多くこなすと、総支給額を増やせます。
条件が整っているビル管理会社で働く
ビルメンテナンス業で年収を上げるために、雇用契約段階での勤務条件も大切な要素です。正社員雇用など、各種手当や福利厚生が充実していれば、給料以外にも働きやすい環境の確保が見込めます。ビル管理会社には、大きなビルをもつ会社のグループに属する系列系の会社と、ビル管理のみを行っている独立系の会社の2種類があります。
グループに属する系列系の会社とは、百貨店・アパレル・通信事業など、異なる業界で事業を展開する大手企業に見られる形式です。系列ビルのメンテナンスが、主な業務となります。雇用先が大手企業になるため、比較的高待遇を見込めます。
夜勤や宿直での勤務が難しく、手当が見込めない場合は、雇用契約の段階から毎月の給料額で一定の年収を確保する方法もあります。
一方で、ビル管理のみを行う独立系の会社は、大手企業や親会社に属することなく、単独でビルメンテナンス業を主とする会社です。ビル管理を委託してもらう形式を採用し、委託元の要望に応じて、さまざまなビルに対応します。
まとめ
工事改修案件が増加している近年、2021年度の国内ビル管理市場規模は、4兆3,425億円となっています。前年と比べると、102.6%の推移です。
建物の使途別で管理市場規模をみると、住宅が約1,579億円、非住宅が約4兆1,845億円となっており、非住宅の内訳でみると最もシェアが高いのは事務所ビルであることが分かります。
参照元:「ビル管理市場に関する調査を実施(2022年)」(株式会社矢野経済研究所)
この原因としては、高度成長期に建てられた建築物が、耐用年数目安の50年経過に伴う老朽化を迎えている点が挙げられます。前述の推計と重ねて、コロナ禍からの発展を促すためにオフィス環境の整備なども増えていくと予測されています。
実際、ビルメンテナンス業の求人は増加傾向にあります。ビルメンテナンスの仕事で活かせる資格を取得し就職を目指してみてはいかがでしょうか。