建築設備士の受験資格は?必要な実務経験と受験から合格までの流れも解説

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建築設備士は、建築設備の専門家であることを証明する国家資格です。取得すれば、キャリアアップや業務の幅を広げるのに役立ちます。

今回は、建築設備士の受験資格や必要な実務経験の条件、受験から合格までの流れについて解説します。

建築設備士とは

建築設備士は、建築設備に関する専門的な知識と技能を証明する国家資格です。建築設備とは、建物の中で快適に過ごすために必要な設備であり、空調、換気、給排水衛生、電気設備などが含まれます。

建築設備士は、建築士が設備設計や工事監理の際に、適切なアドバイスを提供し、安全で機能的な建築を実現する役割を担います。

建築設備士の資格は、1983年の建築士法の改正時に創設されました。建築設備の高度化・複雑化に対応するために、専門的な知識を持つ建築設備士が必要とされるようになったためです。1986年からは建設大臣(現在は国土交通大臣)の指定を受けた公益財団法人 建築技術教育普及センターが試験を実施しています。

建築設備士の受験資格

建築設備士試験の受験資格を得るには、学歴や資格、実務経験など、一定の条件を満たす必要があります。受験資格を得る方法は大きく分けて3つあります。

1.学歴と実務経験を組み合わせる方法
2.特定の資格と実務経験を組み合わせる方法
3.実務経験のみで受験資格を得る方法

下記の区分のいずれかに該当する方は、建築設備士試験の受験資格があります。

【建築設備士試験の受験資格一覧表】

条件

区分

学歴・資格等

建築設備に関する最終卒業学校または資格課程

実務経験年数

学歴+実務

(一)

大学(新制大学、旧制大学)

建築、機械、電気、またはこれらと同等の課程

卒業後2年以上

(二)

短期大学※、高等専門学校、旧専門学校

卒業後4年以上

(三)

高等学校、旧中等学校

卒業後6年以上

(四)

専修学校(専門課程)修業年限4年以上、かつ120単位以上修了

卒業後2年以上

イ以外の専修学校(専門課程)修業年限2年以上、かつ60単位以上修了

卒業後4年以上

イ・ロ以外の専修学校(専門課程)

卒業後6年以上

(五)

職業能力開発総合大学校、職業能力開発大学校(総合課程、応用課程、長期課程)

卒業後2年以上

職業訓練大学校(長期指導員訓練課程、長期課程)

 

(六)

職業能力開発総合大学校、職業能力開発大学校、職業能力開発短期大学校(特定専門課程、専門課程)

卒業後4年以上

職業訓練短期大学校(特別高等訓練課程、専門訓練課程、専門課程)

 

(七)

高等学校卒業後、職業能力開発校、職業能力開発促進センター、障害者職業能力開発校(普通課程)

修了後6年以上

     

高等学校卒業後、職業訓練施設(職業訓練短期大学校を除く)(高等訓練課程、普通訓練課程、普通課程)

 

資格+実務

(八)

一級建築士(免許の発行を受けた者に限る)

2年以上(資格取得の前後を問わず、通算の実務経験年数)

1級電気工事施工管理技士

 

1級管工事施工管理技士

 

空気調和・衛生工学会設備士(空調部門・衛生部門いずれか)

 

第1種・第2種・第3種電気主任技術者

 

実務のみ

(九)

建築設備に関する実務の経験のみ

9年以上

その他

(十)

区分(一)~(九)と同等以上の知識・技能を有すると認められる者

※専門職大学における前期課程の修了者は、短期大学の卒業者と同等とする。

出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和7年建築設備士試験 受験総合案内書

建築設備士の受験資格として認められる実務経験

建築設備士を受験するには、一定の実務経験が必要です。必要な実務経験の年数は、学歴や建築関連資格の有無によって異なります。基本的には、大学や短期大学、高等専門学校、専修学校などで建築・機械・電気に関する課程を修了した後、一定期間の実務経験を積むと受験資格を得られます。

また、一級建築士や施工管理技士などの資格を取得した場合も、所定の実務経験を満たせば受験が可能です。では、受験資格として認められる「実務経験」とは具体的にどのようなものなのでしょうか。

実務経験として認められるもの

実務経験として認められる業務には、建築設備の設計や施工管理だけでなく、研究や教育なども含まれます。ただし、業務の内容や従事した期間によって、実務経験として計算される範囲が異なるため、詳細を理解しておくことが重要です。実務経験として認められる業務は、次の通りです。

【実務経験として全期間が認められる業務】
下記の1〜5に該当する業務に従事していた場合、その全期間が「建築設備に関する実務経験年数」として計算されます。

1.設計・施工・管理業務:設計事務所、設備工事会社、維持管理会社、建設会社などでの建築設備の設計・工事監理(補助を含む)、施工管理、積算、維持管理(保全・改修をともなうもの)など
2.行政・営繕業務:官公庁での建築設備の行政や営繕業務
3.教育業務:大学や工業高校などでの建築設備の教育
4.研究業務:大学院や研究所での建築設備に関する研究(研究テーマの明示が必要)
5.設備機器の設計業務:設備機器製造会社などでの建築設備システムの設計業務
※ ただし、昼間の学校の在学中に従事した業務は、実務経験年数としては計算されません(大学院での研究を除く)。

【一部のみが実務経験として認められる業務】
次のような場合、従事した期間のうち、建築設備に関する業務の割合に応じた期間のみが「実務経験年数」として計算されます。

<設備全般や建築物全般に関する業務に従事していた場合>
・例1:建築設備と「建築設備以外の設備(高速道路の照明設備や船舶の配管など)」を合わせて設計・工事監理・施工管理していた場合 → 建築設備の業務が占める割合を計算
・例2:建築物全般の設計・工事監理・施工管理に従事しており、建築設備のほかに意匠や構造の業務に携わっていた場合 → 意匠や構造の業務を除いた建築設備業務の割合を計算
※ 建築物全般の業務に従事していた場合、建築設備の実務割合が50%を超える場合には、所要の説明資料の提出が必要です。

<一定期間、建築設備を含まない業務に従事していた場合>
建築設備と無関係な業務に従事していた期間がある場合、その期間を除外した期間が実務経験として計算されます。

実務経験として認められないもの

建築物の設計・工事監理、施工管理に従事していたとしても、実際に建築設備に関する業務を行っていなかった場合は、実務経験として認められません。また、建築設備に関する業務を行っていたとしても、単純な作業や補助業務のみでは、実務経験として認められません。具体的には次のような業務があげられます。

【実務経験として認められない業務】
・設計業務の補助作業:設計図書のトレース(設計業務をともなわない作図作業)
・設備管理の補助作業:計器類の監視
・記録、機器類の運転
・工事施工における単純労働:材料運搬や清掃などの単純作業

実務経験は自己申告

初めて受験する場合、受験申込時に所定のフォームへ自身の実務経歴を入力し、必要に応じて「実務経験内容補足説明書」を提出します。自己申告制のため、勤務先や上司などの第三者の証明は不要です。

建築設備士になるまでの流れ

建築設備士になるためには、国土交通大臣登録試験実施機関である公益財団法人 建築技術教育普及センターが実施する「建築設備士試験」に合格する必要があります。

試験は学科試験(一次試験)と設計製図試験(二次試験)の2回に分かれており、資格を取得するまでに一定の期間と準備が必要です。建築設備士になるまでの一般的な流れを紹介します。

<インターネットによる受付>
1.受験申込
受験申込は例年2月下旬~3月中旬にインターネットで受付されます(※)。「学歴+実務」で受験する場合は、卒業証明書等の原本を郵送しましょう。申し込み後、4月上旬~5月上旬に受験資格の判定が実施されます。

※3月中旬の期日までに受験手数料(2025年は36,300 円)の支払いが必要です。受験資格なしと判定された場合は、受験資格審査手数料(同2,200円)を控除した額が返金されます。

2.受験票の発行
受験資格が認められると、5月下旬に受験票が発行されます。受験票はマイページからダウンロードでき、試験当日には印刷して持参する必要があります。

3.一次試験(学科試験)
学科試験は例年6月下旬に実施されます。合格発表は7月下旬です。

4.二次試験(設計製図試験)
学科試験に合格した人のみ、8月下旬に設計製図試験を受験できます。

5.合格発表
二次試験の合格者は11月上旬に発表され、合格者にはマイページで合格証書および通知書が発行されます。

6.資格取得
建築設備士試験に合格すると、建築設備士として登録されます。

なお、試験の日程は毎年変動するため、最新情報は公益財団法人 建築技術教育普及センターの公式サイトで確認してください。

まとめ

建築設備士になるためには、所定の受験資格を満たし、学科試験と設計製図試験の2つの試験に合格する必要があります。受験資格は学歴や建築関連資格の有無に応じた実務経験によって異なり、適切な業務経験を積むことが求められます。受験を検討している方は、受験資格を確認し、計画的に実務経験を積みながら試験対策を進めることが重要です。

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