国家資格「石綿作業主任者技能講習」の合格率が高い理由とは?一発合格するコツも紹介

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建設業や解体業に従事していると、耳にする資格のひとつに石綿作業主任者があります。 石綿作業主任者は、石綿(アスベスト)を扱う現場の環境と作業員の健康を守るために定められた資格です。現場での需要が多い資格である石綿作業主任者を取得することで、建設業や解体業での業務の幅が広がります。資格の取得を考える際に気になるのが修了試験の合格率です。 今回は石綿作業主任者の合格率や取得方法について解説いたします。

石綿作業主任者とは

石綿作業主任者とは、石綿(アスベスト)の除去作業や取扱作業において、作業者の安全を確保して指揮・監督するために必要な国家資格です。アスベストを扱う現場においては、専門的な知識を持つ石綿作業主任者1人の選任と配置が義務づけられています。

ここでは、石綿作業主任者の仕事内容と、石綿作業従事者との違いを解説します。

仕事内容

石綿作業主任者は、アスベスト除去が必要な現場で、下記のような監督・指揮を行います。

・作業方法の決定や作業者への指導
・排気・換気機器の月例点検
・保護具の使用状況の監視

アスベストは繊維が細かいため、一度吸い込むと、体外へ排出するのは容易ではありません。数十年後に中皮腫や肺がん、石綿肺などの健康被害を引き起こすリスクがあるため、慎重な取り扱いが必要です。

アスベストは熱に強いため、かつては建築物や工業製品に多く使用されてきましたが、人体への影響が明らかになり、日本では2006年以降製造や使用が禁止されました。そのため、新築現場で石綿作業主任者が必要となることはありませんが、古い建物にはアスベストが残っていることもあり、解体やリフォームを行う際の除去作業で石綿作業主任者が必要になります。

健康被害から作業者や周辺住民を守るために必要な管理や対応を行うのが、石綿作業主任者の役割です。 

石綿取扱作業従事者との違い

石綿取扱作業従事者とは、アスベストを扱う作業に従事する人です。石綿取扱作業従事者になるには、石綿作業従事者特別教育の受講が必要になります。

なお、石綿取扱作業従事者は現場での作業は可能ですが、指揮や監督はできません。

石綿作業主任者技能講習の合格率と難易度

石綿作業主任者は、労働安全衛生法により2006年に導入された国家資格です。2日間の石綿作業主任者技能講習を受講し、講習の最後に実施される修了試験に合格することで資格を取得できます。

修了試験は、下記2つの条件をすべて満たすことで合格となります。

・各科目の得点が、それぞれの配点の40%以上
・全科目の合計得点が満点の60%以上

修了試験は、技能講習に参加して講義内容を押さえていれば合格できるレベルであり、難易度はそれほど高くありません。合格率は公表されていませんが、技能講習を受講した人の9割以上が合格しているといわれています。

石綿作業主任者に一発合格するコツ

石綿作業主任者の資格は合格率が高いものの、不合格者がゼロというわけではありません。一発合格を目指すために、下記の3つのポイントを押さえておきましょう。

講習を真面目に聞く

石綿作業主任者をはじめとする労働安全衛生法に基づく技能講習は、業務を安全に行うために必要な専門知識の習得を目的としたものです。試験不合格者を出さないために、わかりやすく説明をしています。

そのため、講義をきちんと聞いていれば勉強が苦手な方でも、一発合格を目指せます。基本的なところではありますが、居眠りや流し聞きをせず、真面目に取り組みましょう。

ポイントを絞って覚える

石綿作業主任者技能講習における修了試験は、健康障害や予防措置、保護具に関する知識や関連法令など範囲が広く、テキストの分量も多くなっています。そのため、一見、勉強が大変に思えるかもしれませんが、心配はありません。

修了試験の前には、講師が重要な部分を復習し、アンダーラインを引かせるといった指導を行います。修了試験の大半は講師が示した部分から出題される傾向があるため、そのポイントを押さえておけば合格できる可能性が高くなります。

予習なしで参加しても問題なし

石綿作業主任者講習の受講は、実務経験不問であり、事前知識が求められるわけではありません。予習せずに受講しても、講習をしっかりと聞き、重要なポイントを理解できれば合格できるでしょう。

石綿作業主任者技能講習の流れ

ここでは石綿作業主任者技能講習の流れについて紹介します。講習の詳細は、教習機関によって異なる部分もありますが、基本的には申し込みから受講、修了試験、発表という流れで行われます。

申込

石綿作業主任者技能講習は、各都道府県の労働局や労働基準協会連合、労働局登録教習機関などで行われます。講習の開催日や申し込み期間はエリアによって異なります。

受講の申し込みをする際は、利便性を踏まえて自分の住んでいる都道府県の近くの会場を調べましょう。ただし、住んでいる都道府県以外の会場で受講しても問題はありません。
参照元:厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「講習会情報

石綿作業主任者技能講習の申し込みは、受講する都道府県の講習機関のホームページから行います。基本的にはホームページからの申し込みが原則です。ただし、中には郵送での申し込みを受け付けている教習機関もあります。

石綿作業主任者技能講習は、受講する地域が同じでも教習機関によって受講費が異なります。具体的な金額は、受講費とテキスト、資料代などを合わせて10,000円~20,000円です。また、受講料以外にも写真代や切手代が必要なこともあります。

技能講習を受講

石綿作業主任者技能講習は、2日間にわたって行われます。2日間の受講期間に数名の講師が登壇し、石綿の取扱や作業環境、法令などについての講義を行います。

【石綿作業主任者の講習科目】
1.石綿による健康障害とその予防措置に関する知識
2.作業環境の改善方法に関する知識
3.労働衛生保護具に関する知識
4.関係法令

登壇する講師は、労働安全コンサルタントや防護具メーカーの社員、医師などです。それぞれ、講習科目に沿った講義が行われます。テキストを使った講義だけでなく、実際に防護マスクに触れるような講義もあります。

講習後に修了試験が行われるため、講師が強調したポイントをしっかり覚えることが重要です。

修了試験を受検

石綿作業主任者技能講習の修了試験は、2日目の講習が終わった直後に行われます。

出題内容は教習機関により異なりますが、問題数や試験方法はおおむね決まっています。

・問題数:25問
・試験方法:三者択一式
・試験時間:1時間

上述の通り、難しい問題やひっかけ問題は考えにくく、試験の前にテキストの重要箇所を見直しておくことで合格できるでしょう。

石綿作業主任者の合格発表

修了試験の結果は、試験終了後30分程度で発表されます。

合格していれば、その場でカード型の修了証が交付されますが、教習機関や申込日によっては後日郵送となる場合もあります。事前に確認しておきましょう。

不合格の場合は、教習機関によって対応が異なります。なかには、15分程度の再講習を行った後に追試験を実施する教習機関もあります。

技能講習修了証には、有効期限や更新はありません。ただし、おおむね5年ごとに能力向上教育を受けるという努力義務が定められています。あくまでも努力義務なので、能力向上教育を受けなくても資格が失効することはありません。

石綿作業主任者技能講習に関して把握しておきたいこと

最後に、石綿作業主任者技能講習を受講する際に、あらかじめ把握しておきたいことについて紹介します。

原則としてスマートフォンやPCから申し込む

石綿作業主任者技能講習の申込は、ホームページや郵送などで受け付けています。

原則として、申込はスマートフォンやPCを使ってホームページから行うと定めている教習機関もあるため、事前に確認を行いましょう。スマートフォンやPCが使えない場合は、郵送やFAXで受け付けてくれることもあります。一度、電話で相談すると良いでしょう。

申し込み後のキャンセルはできない

石綿作業主任者技能講習の申し込み後のキャンセルは、原則として受け付けていません。そのため、申し込み後に受講しなかった場合でも受講料は返還されません。

ただし、やむを得ない事情の場合は、受講日の振替対応をしてもらえることがあります。

【振替対応をしてもらえる可能性がある場合】
・病気や災害などのやむを得ない事情がある場合
・新型コロナウィルス感染拡大による感染や講習中止の場合

振替対応の可否は、教習機関の対応だけでなく、社会情勢によっても変わります。基本的には申し込み後のキャンセルは不可であると考えておきましょう。

また、講習では遅刻は認められていないため、各科目の開始前までに着席しておかなければなりません。開始時刻を過ぎても着席していない場合は、欠席扱いとなり講習が未修了となるので注意しましょう。

テキストは技能講習当日にもらえる

石綿作業主任者技能講習では、教本として石綿作業主任者テキスト(中央労働災害防止協会編)を使用します。

講習で使用するテキストや資料は、受講の当日に配布されます。事前送付の対応はしていないので、講習前の予習などはできません。

上述した通り、石綿作業主任者技能講習の修了試験は講習をしっかりと受講していれば合格率が高いといわれています。事前にテキストの送付がなくても、試験の結果にさほど影響はありません。

まとめ

石綿作業主任者は、石綿を扱う現場に配置しなければならない国家資格です。資格は、2日間の講習後に実施される修了試験に合格すると取得できます。

石綿作業主任者の修了試験は、合格率が高く、講習をきちんと受けることでほぼ合格できます。また、講習は実務経験なしに受講できるので、挑戦しやすい国家資格です。

石綿作業主任者の資格取得を考えている人は、事前に講習を受講して合格を目指しましょう。