プラントエンジニアの平均年収は約670万円
厚生労働省の統計データによると、プラントエンジニア(プラント設計技術者)の平均年収は、669.4万円です。年代別の平均年収は、次のようになります。
年代 | 平均年収 |
20〜24歳 | 376.7万円 |
25〜29歳 | 510.1万円 |
30〜34歳 | 610.4万円 |
35〜39歳 | 683.6万円 |
40〜44歳 | 743.3万円 |
45〜49歳 | 779.1万円 |
50〜54歳 | 802.3万円 |
55〜59歳 | 850.9万円 |
なお、国税庁の「令和5年 民間給与実態統計調査」によると、一般的な会社員の平均年収は460万円でした。比較すると、全体の平均年収よりもプラントエンジニアの平均年収のほうが高いことがわかります。
また、年代別に見ると、プラントエンジニアの平均年収が一般の会社員を下回るのは20代前半の時期です。20代後半からは一般的な会社員の平均よりもプラントエンジニアの年収は高く、比較的どの年代でも安定して高い収入を得られることがわかります。
出典:
職業情報提供サイトjob tag「プラント設計技術者」
国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」
プラントエンジニアの年収が高い理由は?
プラントエンジニアへの転職を決める前に、なぜ年収が高いのか理解しておく必要があります。業務内容についても把握し、自分に合っているかどうか検討することが大切です。
高度な専門知識・スキルが求められる
プラントエンジニアの仕事は、生産設備に関する専門的な知識が必要です。
工場で設備を効率良く稼働できるような設計にしなければなりません。あわせて安全面への考慮も必要です。
また、生産設備に関する知識だけでなく、設備で製造する製品に関する知識が求められる場面も多々あります。そのうえ、製造する製品はプラントによって異なり、電化製品を製造するプラントもあれば、食品工場や医薬品工場もあります。
具体的には、次のようなスキルも重要です。
各プラントの専門知識
プラントエンジニアになるには、機械工学や化学工学などのプラントの種類に関係のある高度な専門知識が必要です。
プラントの設計や保守などに直接関わることから、学士以上の知識レベルが求められます。
マネジメント力
プラントエンジニアは、現場でチームを指揮したり、プロジェクトを管理したりする仕事です。
規模の大きいプロジェクトで適切なコミュニケーションを図りながら人をまとめる力が求められます。
調整力・適応力
プラントエンジニアとしてプロジェクトを進行するには、クライアントやメーカーの担当者など多くの関係者とコミュニケーションを取らなければなりません。
プロジェクトをスケジュール通りに進められる調整力や現場での適応力も求められます。
プロジェクトの規模が大きい
プラントの規模はさまざまですが、ほかの建物と比べて全体的に規模が大きいのが特徴です。広大な敷地の中に大規模な設備を備えた工場を作ることもあります。
そのため、プロジェクトの規模も大きくなりやすく、それだけ責任も重くなるのです。
また、プロジェクトの規模が大きいと、さまざまな方と関わる機会が増えます。場合によっては意見が対立して計画通りにプロジェクトを進めるのが難しくなることもあります。そのようなときに、折衝や交渉をするのもプラントエンジニアの役割です。
専門知識だけでなく、コミュニケーション能力や調整力なども求められるのです。
海外への長期出張もある
プラントエンジニアの多くは国内だけでなく海外でも活躍しています。実は国内のプラント建設数はそれほど多くはなく、海外のほうがプラント建設は盛んに行われているのが現状です。
そのため、プラントエンジニアの職に就くと、海外出張に挑戦できる機会もあります。基本的にプラントが完成するまでの間、現地で働くことになるため長期出張が多いのも特徴です。
海外での仕事は、当然のことながら現地の人とのやり取りが中心になるため、語学力が求められます。折衝や交渉も国内での仕事以上に労力を要します。
そのような事情から海外出張時はハードワークになりやすいといえます。
人材が確保できていない
プラントエンジニアの需要は高まっていますが、その一方で十分な人材が確保できていない現状です。プラントエンジニアに限らず、建設業界全体として高齢者が多く、後継者が不足している状況です。
そのような中で、企業側は必要な人材を確保するため、好条件で求人を募集するケースが多いです。
また、経験者が優遇される傾向にはあるものの、未経験で応募可能な求人が募集されている場合もあります。ほかの職種からプラントエンジニアへの転職を希望する方にとっては、チャンスともいえる状況です。
プラントエンジニアで年収アップを目指す4つの方法
プラントエンジニアは平均年収が高めですが、より多くの年収を得る方法を知りたい方もいるのではないでしょうか。その場合には、次のような方法で年収アップを狙えます。
規模の大きい会社へ転職する
一般的に同じ職種なら規模の大きい会社の方が年収も高い傾向にあります。この傾向はプラントエンジニアにも当てはまり、中小企業よりも大企業のほうが年収は高めです。
中小企業でもプラントエンジニアなら、決して年収が低いわけではありません。しかし、より大きな企業で大規模な工事現場を経験することで、さらなる収入アップにつながるでしょう。
現在中小企業に勤務していて、これ以上の年収アップが見込めない状況なら、大企業への転職を検討しましょう。有名企業に転職する方法のほかに、有名企業の配属がある派遣で働くのもおすすめです。
資格を取得する
プラントエンジニアに必須の資格はありません。ただし、資格保有者や高度な専門知識を有している人のほうが活躍の場が広がる可能性が高く、そこから年収アップにつなげられるケースもあります。
勤務先によっては、資格手当などもあります。資格の勉強をすることで、知識が身についたり、理解を深められたりするのが大きなメリットです。
また、未経験でプラントエンジニアへ転職する場合には、資格を持っていることで良いアピールポイントになります。資格保有者に限定して募集している求人は年収も高い傾向にあります。
例えば、公害防止管理者の資格保有者向けの求人だと、平均給与よりも5%程度高い年収です。
そのほかプラントエンジニアの仕事で役立つ資格としては、技術士や施工管理技士などがあげられます。海外赴任を希望する場合には、TOEICなど英語の資格も取得しておくことをおすすめします。
海外赴任する
海外のプラント建設も担当すれば、海外赴任手当などの対象になるため年収アップにつながります。
プラントエンジニアの仕事をしていれば、そのうち人事異動で海外赴任になるかもしれません。とはいえ、意欲的だと評価も上がりやすいため、自ら希望を出すのがおすすめです。
また、海外赴任で得た経験がスキルアップにつながることも多いです。SV(スーパーバイザー)への昇進を目指す場合にも有利に働くので、検討してみてください。
SV(スーパーバイザー)を目指す
プラントエンジニアの中でも、SV(スーパーバイザー)の役職に就いている方は年収が高めで、年収1,000万円超えも目指せます。
SVとは、管理監督などの仕事で、部下のプラントエンジニアがそれぞれひとつずつプラントを担当し、進捗状況の管理などの統括業務を行います。規模の大きなプロジェクトを担当するケースも多くあります。
SVになるには、十分な実績や専門スキルに加えて、マネジメント能力やコミュニケーション能力が必要です。
プラントエンジニアの将来性が高い理由
データからもわかるように、プラントエンジニアは平均と比べて年収の高い職種です。海外赴任や資格取得などでさらなる年収アップもねらえます。また、将来性も高い職種と考えられており、中長期で稼ぎやすい仕事です。
プラントエンジニアの将来性が期待されている3つの理由を紹介します。
中東やアジアでプラント需要が高まっているから
新規のプラントの建設は、国内においてはある程度需要が満たされています。今後の需要拡大が期待できるのは、海外のプラント建設です。
特に需要の拡大が見込まれるのは、中東やアジアの国々です。経済発展が著しい途上国では、電力プラントや交通インフラなどの需要があります。石油や液化天然ガスなどの資源がある国や地域では、石油精製などの化学プラントのエネルギー関連の需要もあります。
プラントエンジニアは、インフラがまだ十分に発達していない国や地域で必要性の高い職種です。今後も海外を中心に多くのプラント建設が計画されていることから、プラントエンジニアは将来性が期待できます。
国内でも既存プラントの改修需要があるから
中東やアジア諸国などと比べると、国内の新規プラント建設の需要は落ち着いています。しかし、プラントは建造物であり経年劣化もあるため、定期的な点検や改修が必要です。プラントが老朽化すると建て替えも必要です。
国内においても、すでにあるプラントの改修需要があります。さらに、今後の展開として需要が高まってきているのが、新しい技術を導入した既存プラントの改修です。
プラントの運用や保守にデジタル化やAIなどのIT技術を導入する動きや省エネルギーの装置を導入する動きもあります。新しい技術の知見やスキルがあれば、プラントエンジニアとしての仕事の幅を広げられます。
新しい分野でプラント需要が発生しているから
国内外では、新規分野でのプラント需要も注目されています。新しい分野でのプラント建設の需要が高まることで、プラントエンジニアの需要も高まるためです。
過去には、LEDや液晶などが普及した時期に、プラント需要が伸びたこともありました。新技術が普及するタイミングで、技術を活用した製品の製造を支えるプラントの需要が高まり、プラント建設が活発になる傾向があります。
近年の傾向として注目されている分野が、環境プラント、水処理プラント、太陽光発電などです。新分野への注目度が高まることで、プラント建設が活発になり、プラントエンジニアの仕事が活性化する期待がもてます。
まとめ
プラントエンジニアは建設業の中でも年収が高めの職種です。資格を取得したり海外赴任をしたりすれば、さらなる年収アップにつなげられます。建設業界で年収が高い職種に転職したい人は、ぜひプラントエンジニアを目指してみてください。
日本国内のプラント業界はすでに成熟しています。国内でプラントエンジニアの仕事をする場合には、既存プラントの改修や改造などが中心となる傾向にあります。新規のプラント建設需要は少なめですが、完成後のメンテナンスに対する需要は継続的に見込まれる状況です。
一方で、発展途上国ではプラント建設が活発化しており、日本企業も積極的に参入しています。エネルギー転換によるプラント需要も高まりつつあります。
そして、今後も新技術が広まれば、新たなプラント需要が発生する見込みです。プラントエンジニアは、時代の変化に沿ったプラントの設計に携われる意味で将来性があるといえます。