監理技術者と主任技術者の違いは?役割と資格・経験などを解説

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建設工事の適正な施工を確保するため、建設業法では現場に「配置技術者」を置くことを義務付けています。配置技術者は「主任技術者」と「監理技術者」のふたつに分かれています。似ている役割ではありますが、求められる場面など異なるところもあります。 この記事では、主任技術者・配置技術者の違いを、工事範囲・役割・なるための要件という3つの視点から解説していきます。

主任技術者・監理技術者の工事範囲の違い

まずは、主任技術者と監理技術者が担当できる工事範囲の違いについてご紹介していきます。

下請金額4500万未満は主任技術者

主任技術者は、すべての工事現場に配置する義務があります。元請や下請、請負金額に関わりません。しかし、監理技術者が配置されている現場には主任技術者を置く必要がないため、実質的に監理技術者が必要ない小規模の工事現場にだけ配置されることが多いです。

主任技術者が担当できる工事は、一般建設業と、特定建設業のうち下請金額が4500万円未満のものです。建築一式工事の場合は7000万未満までを担当することができます。

しかし、主任技術者の配置義務は令和2年度10月1日から一部緩和され、鉄筋工事・型枠工事かつ下請金額が4000万円未満の工事には、必ずしも配置する必要はなくなりました。

下請金額4500万以上は監理技術者

下請金額が4500万円を超える大規模な工事(建築一式工事の場合は7000万以上)の場合は、主任技術者ではなく監理技術者を配置することになります。監理技術者のいる現場には、主任技術者の配置は不要です。

国や地方自治体の公共工事や大型商業施設の工事の場合、請負金額が4500万円以上(建築一式工事の場合は7000万以上)になると、監理技術者の配置は必須です。監理技術者が配置される現場は、必然的に大規模な工事なので主任技術者よりも高度な経験や資格が求められます。

なお、監理技術者等の専任制度の見直しにより、遠隔施工管理等を活用した兼任制度の新設が検討されています。

出典:「技術者制度の見直し方針」(国土交通省)

主任技術者・監理技術者の役割についての違い

主任技術者と監理技術者の役割に大きな差はありません。両方とも工事現場に直接配属され、工事計画の作成や工事現場の監理・監督を担当します。

ただし、それぞれの責任範囲を明確に定めている企業もあります。ここからは、その場合の主任技術者と監理技術者の担う役割や、両者の違いについて解説します。

主任技術者・監理技術者ともに工事全体の管理を行う

基本的に、主任技術者と監理技術者には、建設業法に規定された職務・役割に違いはありません。双方とも工事全体の監理が仕事とされており、具体的には以下4つの業務に従事します。

1.施工計画の策定・実行
2.工事の工程管理
3.工事の品質管理
4.工事の安全管理

『施工計画の策定・実行』とは、工事が設計図通りに、予算内で安全に行われるように計画したものです。具体的には、以下の5項目の検討が行われます。

・工事の目的、内容、契約条件等の把握
・現場の条件
・基本工程
・施工方法
・仮設備の選択や配置

こうして作成した計画に従って、工事の工程や品質・安全の確保を行います。主任技術者も監理技術者も、同様の役割を担っています。

監理技術者は工事全体の技術指導も担う

監理技術者の業務も基本は変わりません。監理技術者も上記4つの業務は果たさなければなりません。ですが、監理技術者はこれに加え、下請負人を適切に指導・監督するという総合的な役割と、責任が含まれます。

主任技術者と監理技術者の専任・兼任とは

主任技術者と監理技術者は、基本的に担当する工事現場以外の現場との兼任は認められていません。ただし、例外もあるので、専任・兼任について解説します。

主任技術者と監理技術者の専任とは?

そもそも専任とは、ひとつの任務のみを担当することです。請負金額4,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)の工事(個人住宅・長屋をのぞく)における主任技術者と監理技術者は基本的に工事現場ごとに専任する必要があり、担当する工事現場以外の現場との兼任は原則認められません。

主任技術者と監理技術者が兼任できる例外

請負金額4,000万円未満(建築一式工事は8,000万円未満)の工事では主任技術者の専任は必要ないため、兼任は可能となっています。

また、例外的に主任技術者・監理技術者の兼任が認められる場合もあります。以下の条件を見てみましょう。

・密接な関係のある同一・近隣場所の工事(主任技術者に限る)
・契約工期が重複する工事で、工事対象がそれぞれ同一または連続するもの

また、監理技術者の専任が必要な工事で、1級施工管理技士補の資格もしくは監理技術者の資格を持つ主任技術者を監理技術者補佐として設置できる場合には、監理技術者は特例監理技術者となりふたつまでの工事現場の兼務が可能になります。

主任技術者の資格を取得するための要件の違い

主任技術者・監理技術者は誰でもなれるわけではなく、一定のスキルや経験が必要です。担当する工事の業種によって取得する資格は異なるため、希望する業種を確認してみてください。

主任技術者

主任技術者になるには、大きく3つの条件があります。

・指定学科を修了し、一定の実務経験期間を満たす
・複数の業種に従事し、特定の業種で一定の実務経験期間を満たす
・建設業の業種に応じた一級・二級の国家資格を取得する

ひとつずつ、順に解説していきます。

実務経験を積む

主任技術者になるひとつ目の方法は、学校にて指定の学科を学んでから、実務経験年数を積むことです。終了した学校や過程によって主任技術者になるための実務経験年数には差があります。

高等専門学校の指定学科の卒業者

実務経験3年以上

大学の指定学科卒業者

実務経験3年以上

それ以外の学歴の者

実務経験10年以上

出典:「技術検定の概要」(国土交通省)

また建設業には29種類の業種があり、業種によって指定学科が決められています。例えば土木工事業の場合、指定学科は「土木工業、農業土木、鉱山土木、森林土木、都市工学、衛生工学」となります。

複数業種の実務を経験する

指定の実務経験があれば、主任技術者になれることもあります。この実務経験は、複数の事業に従事する経験がある場合によります。

例えば、大工工事業なら「建設工事業および大工工事業で12年以上、そのうち大工工事業が8年以上」の実務経験があれば大工工事業の主任技術者になれます。

他にもとび・土木工事課の場合は、「土木工事業およびとび・土木工事業で12年以上、そのうちとび・土木工事業が8年以上」が必要です。

屋根工事業やしゅんせつ工事業、ガラス工事業も、それぞれ複数の業種に従事した経験があれば、主任技術者に任命されることがあります。

国家資格を取得する

主任技術者になる3つ目の方法は、国家資格を取得することです主任技術者になるために必要な国家資格には、「1級・2級建設機械施工技士」「2級建築及び土木の施工管理技士」「2級建築士」などがあります。

一例として、土木一式工事・建築一式工事・電気工事の資格要件をまとめました。

建設工事の種類

主任技術者に必要な国家資格

土木工事業

①技術検定
・建設機械施工技士
・1級土木施工管理技士
・2級土木施工管理技士(土木)

②技術士
・建設部門
・農業部門(農業土木)
・森林部門(森林土木)
・水産部門(水産土木)
・総合技術監理部門(建設部門、農業土木、森林土木、水産土木)

建築工事業

①技術検定
・1級建築施工管理技士
・2級建築施工管理技士(建築)

②建築士
・1級建築士
・2級建築士

電気工事業

①技術検定
・1級電気工事施工管理技士
・2級電気工事施工管理技士

②技術士
・電気電子部門
・建設部門
・総合技術監理部門(電気電子部門、建設部門)

③電気工事士免状交付者
・電気工事士(第1種、第2種)
(第2種については有資格後3年以上の実務経験が必要)

④電気主任技術者免許状交付者
・電気主任技術者(第1、2、3種)
(有資格後5年以上の実務経験が必要)

⑤建設工事に従事する者の技術・技能審査等事業
・1級計装士(合格後1年以上の実務経験が必要)

⑥建築設備に関する知識及び技能の審査
・建築設備士(有資格後1年以上の実務経験が必要)

出典:「技術検定の概要」(国土交通省)
出典:「建設業法に基づく適正な施工体制と配置技術者(資料編)」(国土交通省)

監理技術者

監理技術者になるには、1級施工管理技士・1級建築士・技術士の国家資格が必要です。また、施工管理技士に関しては、工事の種類や業種に合った資格を取得する必要があります。例えば土木なら1級土木施工管理技士、建築なら1級建築施工管理技士といった具合です。

指定建設業以外では、実務経験を満たせば監理技術者になれることがあります。以下は実務経験による資格要件をまとめているので、参考にしてみてください。

 

学歴または資格

必要な実務経験年数

1

高等学校の指定学科卒業後

5年以上

2

専門学校の指定学科卒業後

5年以上

3

高等専門学校の指定学科卒業後

3年以上

4

専門学校(専門士又は高度専門士)の指定学科卒業後

3年以上

5

短期大学の指定学科卒業後

3年以上

6

大学の指定学科卒業後

3年以上

7

1~6以外の学歴の場合

10年以上

出典:「建設業法に基づく適正な施工体制と配置技術者(資料編)」(国土交通省)以上の要件を満たしたうえで、監理技術者講習を受講する必要があります。

主任技術者・監理技術者以外にも覚えておきたい職種

建設業においては、主任技術者・監理技術者のほかにも、配置しなければならない職種や関連職種があります。あわせて覚えておきましょう。

専任技術者

専任技術者は、請負・契約・入札などについて専門的な知識を持つ資格者建設業許可を受ける際に必須です。配置されるのは営業所で原則常駐が必要なため、基本的に現場に出ることはありません。ただし、要件を満たす場合には、主任技術者との兼任も認められています。

現場代理人

現場代理人は、公共工事や大規模な民間工事などに配置される、工事全体の責任者を指します。工事請負人の代理人として現場の統括や請負代金の請求業務などを行います。主任技術者や監理技術者が兼務するケースも多くあります。

現場所長

現場所長は、現場における最高責任者のことで、最終責任を持ちます。現場代理人と監理技術者もしくは主任技術者のどちらかが兼務することが多いですが、工事規模が大きな場合には、現場所長を別に設置することもあります。

工事主任

工事主任は、現場の安全や作業工程などの管理を担う人で、現場監督者を指すのが一般的です。資格は必要なく、現場経験の豊富な人が選ばれます。監理技術者や主任技術者の配置が不要な現場では、工事主任が現場所長の役割を担うケースもあります。

まとめ

主任技術者と監理技術者は役割に大きな違いはありませんが、配置される現場や必要な学歴・資格に違いがあります。なかでも、監理技術者は下請けに対する指導など、より総合的に管理する立場となるでしょう。

とはいえ、主任技術者は監理技術者がいない現場では確実に必要となるため、求められる機会が多くなるかもしれません。

どちらも責任ある立場ですので、紹介した国家資格の取得や実務経験など、必要な要件は多くあります。資格支援サポートのある会社で実務経験を積みながらひとつずつ要件を満たしていくのはいかがでしょうか。

共同エンジニアリング」では、国家資格の取得に向けた資格支援研修を行っています。また、未経験からの転職でも活躍できるよう育成プログラムや教育制度を整えています。主任技術者・監理技術者になりたい方は、どうぞお気軽に「共同エンジニアリング」までご相談ください