就活中に初めて知った「施工管理」という、興味深い職種
──就活で重視していたことや、技術職を志した理由を教えてください。
大学では文学を学び、サークルは広告研究会で活動していました。最初は、メディアやイベント関連の会社で働こうと考え、エントリーしていたのですが、実際に就職活動を始めるとイベントそのものが好きであったり詳しかったりするわけでもなく、将来その業界で何をしたいのか想像ができなかったため、「本当に自分がやりたいことだろうか?」「やりがいを感じられるだろうか?」といった疑問が生まれたのです。そこで、就職エージェントに疑問を相談したところ、プロジェクトや人を管理する“施工管理”という仕事があることを知りました。
自分で調べてみると、「現場を客観的な視点でとらえ、管理する仕事」であることがわかり、サークルでも、リーダーの横で組織をマネジメントするのが好きで得意だったので、“自分に向いているな”と感じました。そこで「施工管理」を軸とした就活に切り替えることにしました。また、写真が趣味なのですが、モチーフは建築物や風景が好きで、“建築物に関われる仕事”だということも選んだ理由のひとつですね(笑)。
──共同エンジニアリングへの入社を決めた、一番の理由はなんでしたか。
施工管理の派遣をしている企業を、2~3社ほど受けました。当社に決めた理由は、面接のときに話しやすく、働いている方の雰囲気が良かったことが大きいですね。こちらの話もじっくりと深く聞いてくれて、的確に答えてもらえました。というのも、面接官の方が施工管理の経験者だったので、現場についてわかりやすく丁寧に説明をしてくれて、知りたいことを率直に質問できました。
──今の仕事内容を教えてください。
入社2年目の2022年9月より、岐阜県にある橋梁(きょうりょう)撤去工事で、施工管理業務の中の「現場管理」をしています。このすぐ前の現場は東京都で、橋梁の補修工事にたずさわっていました。具体的な業務は、職人さんが毎日安全に作業できるように見守ったり、プロジェクトや資材・機材の搬入搬出の進捗を確認したり、作業工程の写真などの管理をしたり、潤滑に業務が進むようにサポートする仕事でした。仕事を始めてから最初に驚いたのは、実際に作業する時間より、準備の時間が長いということ。たとえば、高所での作業であれば、まずは足場をつくるのですが、ここでの時間が結構かかるのです。現場に関わる多くの人々が、長期間を経て積み上げている“橋梁工事”の奥深さを感じました。
巨大プロジェクトが進んでいくさまを、体感できるおもしろさ
──仕事で、苦労を感じたことはなんでしょうか?
とにかく、最初の現場で「右も左もわからない状態」でしたので、大変でした。もちろん、社内で講習を受けているので、基礎的なところは事前に学べます。ただ、橋梁工事は公共事業で独自の詳細なルールなどもあって、“現場に出なければわからない”ことがたくさんありました。
最初は、職人さんから名前ではなく「お姉さん」と呼ばれており、“若い人がやってきて、内容を把握できているのだろうか? ”といったような懸念を持たれているように感じてしまったり、朝礼でうまくスピーチができなかったりと、もどかしい思いをしたこともありました。
ただ、徐々に仕事を覚えていくにしたがって、認めてもらえているように感じました。最初に「平櫛さん」と名前で呼ばれたときは、“しっかり認識してもらえたんだ”と、うれしかったことを覚えています。
──仕事を覚えるために心がけたことや、「楽しいと感じたこと」を教えてください。
人に馴染むことですね。職人さんや現場事務所の所長さん、元請けの社員さんなど現場にかかわる人たちに対して、自分から積極的にコミュニケーションをとるようにしました。ただ、無理に溶け込もうとしなくても、すんなりと受け入れてくれる環境だったので、ありがたいことに自然となじむことができました。楽しいと思ったのは、工事が進んでいく過程を体験でき、達成感を感じられるところです。最初の現場では、工事が完了するときに「もう終わってしまう」と、ちょっと残念な気持ちになったくらいです。
──現場での、率直な感想を教えてください。
基本的に、良いところしか思い浮かばないですね。
最初の現場は「所長さんから直接、仕事を教わることができる」という、めずらしい職場で、貴重な経験を積むことができました。所長さんと一緒に現場をまわって仕事を学びながら、徐々に搬入作業の確認などを任されるようになり、だいたい半年ほどで、ひとりで現場の管理ができるようになりました。あとは、就活のときに業界研究をする中で、「年齢層が高い」という知識はあったのですが、実際現場にでると、40代で“若手”という環境には驚きましたね。
とくに、新卒の“女性”は少ないので、まわりが色々と気を配ってくれるのは、働いていてありがたいと感じるところです。そして、最近は少しずつではありますが、着実に若い女性も増えています。個人的には、女性独自の目線を活かして働ける側面があると思っているんです。現場での安全において整理整頓や清掃は重要になってくるのですが、時間が限られていることもあり、実際に片付けながら作業を進めていくのは難しいところでもあります。私たちは実作業を行わないので、現場巡視している中で片付けられていない危ない箇所などがあれば、自分でできる範囲は整頓し、できない部分は職人さんに指摘します。現場で何度か女性の施工管理の方と働きましたが、男性とはまた違う視点で気付く部分があるので、男性社会の建設現場において役立つのではないかと思います。だから、この仕事の魅力を、もっと若い人たちに知って欲しいと願っています。
技術職の魅力を、もっと若い人たちに伝えたい!
──今後のキャリアビジョンは、どのように思い描いていますか?
業務に役立つ資格を取得して、施工管理の道を突き進みたいですね。先日、ちょうど土木施工管理技士2級の試験を受けてきたので、今は合否待ちです。資格については、施工管理の中にも「土木」や「電気」など複数あります。たとえば「土木施工管理技士」であればまず2級を取り、経験を積んだのちに1級の受験資格を得られるという仕組みです。
さらに、将来的な目標としては、建設業界の人員不足の解消に役立ちたいです。とくに、若い女性が活躍できるように、私がその礎になれたらと思っています。大学時代のサークルでも“みんなが行動しやすい、環境づくり”の推進をしていたので、ゆくゆくは新人の育成や、働きやすい環境づくりにも挑戦したいですね。
──平櫛さんが考える働きやすい環境の理想像を教えてください。
現場に関わる全員がやりがいを持ち、イキイキと活躍できる環境でしょうか。そのためには、工事に携わる方それぞれの理念や考えなどをくみ取ることが必要だと思います。
今、橋梁工事のプロジェクトに参加しているのですが、全員がプロフェッショナル。ありがたいことに、職人さんたちから目をかけてもらい、専門的な話を聞くことができるので、学びの毎日です。橋梁は、ビルなどであれば建築作業は「上に向かう」わけですが、橋は横に伸ばしていくために、特殊な工法でプロジェクトが進むこと。コミュニケーションを密にとって、それぞれが専門性を最大限に活かせるようにサポートしたいです。現場は施工管理や職人さん以外にも、発注者や設計、営業など多くの人の協力があって成り立っています。関わるすべての人が工事の完成に向かって一致団結し、互いに協力し合って働けるような最高の現場にする「施工管理」が理想像ですね。互いを尊重し、コミュニケーションを密に取り合うことができれば、無事故・無災害はもちろん、作業も円滑に進み、ストレスの少ない現場になると思います。
──就職を考えている学生に向けて、ひと言お願いします。
「施工管理という技術職の仕事は、楽しいですよ!」と、伝えたいですね。とくに私と同じような、若い人たちには「ぜひ、一度トライしてみて」とすすめたいところです。橋梁であれば、プロジェクトがカタチになっていくさまを目の前で体験できますし、地図にも記されます。数多くの人々の役に立つインフラを、“縁の下の力持ち”として支え、目に見える社会貢献ができるのが、施工管理の奥深さだと思います。
※2023年5月8日時点の記事です